パクチーの香りを楽しむ二品「鶏肉飯」「タコとパクチーのカルパッチョ」

五感をひらくレシピ #30

2022.10.19

「五感をひらくレシピ」を、自炊料理家の山口祐加さんに教えてもらうこちらの連載。今回のテーマは「パクチー」です。パクチー好きにはたまらない、パクチーがあるからこそおいしくなる二品。ぜひ作ってみてくださいね。


今回の食材:パクチー

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アジア料理だけに留まらず、メキシコ料理やポルトガル料理にも使われる「パクチー」。その強烈な香りは好き嫌いがはっきりと分かれ、外食でも「こちらの料理はパクチーを使っていますが、大丈夫ですか?」と聞かれることが多い。私は決まって「大好きです」と答えている。子どもの頃は苦手だったけれど、20歳の頃久しぶりに外食で食べて「あれ…?このくせの強い香り、好きかも」と思ってから、自分でも買って料理するようになった。今回はパクチーがあることでぐっとおいしくなる二品をご紹介したい。

鶏肉飯(ジーローハン)

鶏肉飯を知ったのは台湾料理屋でのこと。その店のメニューには、魯肉飯(ルーローハン)と鶏肉飯(ジーローハン)があった。豚の角煮ごはんのような魯肉飯はよく耳にしていたし、最近流行っているなと思っていたが、鶏肉飯は初耳。一緒に行った人と二人で、両方頼んで分け合うことに。

テーブルに置かれたのは、ごはんの上にほぐした鶏胸肉とパクチーがのっていて、醤油色をしたたれをかけて食べるという素朴な料理。「質素な感じの味かな」と思って食べると、鶏の旨味がぎゅっと詰まったたれとごはんが絡み合い、パクチーの香りがパンチのあるアクセントになってたまげるほどおいしい。結局、二人で鶏肉飯を取り合うことになった。これは自分で作ってみたいと思い、自分なりに再現したら、簡単なのに想像以上にうまくできた。ではさっそく作ってみよう。

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鶏胸肉でもいいが、調理時間が短くて済むので今回はささみを使う。この五感をひらくレシピではお馴染みの茹で鶏を作る。

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次にたれを作る。白ねぎ1本、にんにく2〜3かけ、生姜1〜2かけをみじん切りにする。フライパンにごま油大さじ2、米油(あるいはサラダ油)大さじ1、白ねぎのみじん切りを入れて中火で5分炒める。

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ねぎが少しずつ茶色になり始めたら、にんにくと生姜を入れる。しゅわしゅわと音を立てて三つの素材に火が通り、キッチンにアジアらしい香りが漂う。最高にいい香り。

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にんにくが焦げないように弱火で3〜4分炒め、白ねぎがこげ茶色に色づいたら火を止める。ここにささみの茹で汁大さじ3、醤油大さじ1と1/2、黒酢(なければ普通のお酢でOK)大さじ1を加える。これでたれが完成。

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丼にごはんをよそい、上にささみを手でほぐしたものをのせる。たれをかけて、あとは好きなだけパクチーをのせて食べよう。

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鶏のやさしいうまみ、アジアらしい香味だれ、パクチーの青々しい香り、ごはんの甘み。それぞれがちょうどいいバランスで成立している。試作の際に一度パクチーなしで食べてみたのだが、どうも味気なく感じた。パクチーがあると三割増でおいしくなるのがこの料理。

また、ささみの茹で汁はおいしい鶏スープなので、適当に具を入れればスープになる。この日は友人が作ってくれたキムチピータン豆腐と一緒に鶏肉飯定食を食べた。

鶏肉飯のたれはドレッシングに使ったり、炒め物の味付けに使ったり、スープに入れたりと万能。作り置きもしやすいので、ぜひお試しあれ。

タコとパクチーのカルパッチョ

魚介類の中でも見た目が特徴的で、味わいもしっかりとしたタコ。タコとパクチーは個性の強いもの同士で相性抜群。サラダにすることもあるが、今回はカルパッチョ風に仕上げてみよう。

タコは好きな厚さに切る。ぶつ切りにすればまた違った食感が楽しめるのでお好みでどうぞ。

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タコを皿に並べ、塩を少々振る。パクチーを2cm幅に切ってのせ、冷蔵庫にあった赤玉ねぎも彩りとして入れてみた。あってもなくてもいいし、普通の玉ねぎでもいい。
香草類を切っている時に香りがぱっと開く感じは、料理していて楽しい瞬間。まさに五感をひらいて、身体で香りを味わっている感じがする。

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今回使ったパクチーは立派な根がついていたので、ごま油で揚げてみることにした。フライパンでごま油を熱し、温まったらパクチーの根を入れる。すぐに火が通るので、熱々の油を皿に盛ったタコとパクチーの上に回しかける。

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「ジー、ジー」という音とともに、ごま油とパクチーの力強い香りが広がる。

パクチーの上から醤油とお酢を少しかける。タコは塩味、パクチーは醤油味と分けることで、味に差が生まれて飽きずに食べられる。最後にパリパリに揚げた根をトッピングした。

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タコとパクチーはそれぞれに食感、味、香りが異なり、単体で食べるよりもおいしくなる。素材そのままでも食べられるものだけれど、「料理」する意味が確かにあることを感じた。5分あれば作れるものでも、組み合わせと調理次第で立派な一皿になるから料理は楽しい。タコ以外にもホタテやイカも合うはずだ。パクチーを使わずにクレソンなどを使ってもおしゃれな一皿になる。アレンジ次第でずっと楽しめる魚介と香草のカルパッチョ。いろいろと試してみたくなった。

以前、風邪をひいた時に、香りが一切感じられなくなったことが三日ほどあった。だるい身体を引きずって料理しているにも関わらず、嗅覚が使えないことで料理中の楽しさが七割減くらいに感じた。

大葉はただのざらっとした葉っぱだし、パクチーも同じようなもの。香りがない世界はこんなにもグレーに見えるのか、と驚いた。少しずつ回復する中で、香りが感じられるようになり、泣けるほど嬉しかった。普段は香りのことなど大して気にしていないけれど、香りを感じながら料理ができることは、とても色鮮やかな世界を生きることなのだ。

山口祐加

自炊料理家、食のライター。共働きで多忙な母に代わって、7歳の頃から料理に親しむ。出版社、食のPR会社を経て2018年4月よりフリーランスに。日常の食を楽しく、心地よくするために普段は一汁一菜を作り、ハレの日は小さくて強い店を開拓する。料理初心者に向けた対面レッスン「自炊レッスン」や、セミナー、出張社食、執筆業、動画配信などを通し、自炊する人を増やすために幅広く活躍中。好物は味噌汁。
Voicyにて「山口祐加の食べラジオ」を配信中。

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