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有賀薫さんがアイスム編集部と語る、おうちごはんを10倍楽しむ方法

耳で楽しむおいしいスープレシピ #32

PEOPLE
2023.04.03

スープ作家 有賀薫さんの声でお届けする“聴くレシピ”として、2020年にスタートした『耳で楽しむおいしいスープレシピ』。いつもは音でレシピをご紹介していますが、今回は「おうちごはんを10倍楽しむ方法」をテーマにスペシャルトークをお届けします!料理をしながら、あるいはコーヒーを飲みながら、有賀さんとアイスム編集部スタッフ(中辻・虫明)の楽しいトークをお楽しみください♪


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料理の「好きと苦手」を考える

有賀 まずはアイスムの4月・5月特集テーマ「料理の好きなところ、苦手なところ」からトークを始めましょう。料理って「好きなところ、苦手なところ」がそれぞれ異なりますよね。中辻さんと虫明さんは、普段ごはんを作っていて、どういうところが苦手だと感じますか?

中辻 私は切ったり火を入れたりする作業が結構好きで、料理自体も好きなのですが、時短レシピで「電子レンジで何分」と言われた時の調整が難しいです。指示通りに加熱しても火が通らない場合、あと10秒?いや30秒?と少しずつ追加するのですが、結局失敗…。何かに任せるのが苦手で、オーブンも得意ではありません…。

有賀 私もレンジ調理は苦手です。どこまで火が通っているのか分かりにくいですよね。スープを作る場合、一人分ならレンジでも良いですが、二人分以上だと鍋の方がおいしくできると思います。下ごしらえはレンジの方が良いかもしれませんね。

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虫明 私は大きな野菜を切るのが苦手です。ねぎやキャベツは、まな板からはみ出す感じがわずらわしいんです。逆に、なすやピーマンは収まりが良くて愛らしく思えます(笑)。

有賀 まな板のサイズが小さいのではないでしょうか?

虫明 そうなんです…。後片付けが面倒なので、大きい調理道具を使うのが好きではなく、小さく済ませたいんです。でもやっぱり家族4人分だと小さすぎて…。適切なサイズの器具が選べず、結局面倒になっているという(笑)。

有賀 大きな野菜が大変というのは分かります。切っても全部使わないから、冷蔵庫に戻す手間もありますよね。ただ、適切なサイズの器具を選ぶのは大切です。ペラペラで小さいまな板だとうまく切れず、大きなまな板で刃渡りのある包丁だと楽に切れますよ。切るのが嫌いな人ほど、こだわってゆとりのあるサイズを選ぶのをおすすめします。

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(写真左:中辻、右:虫明)

有賀 一方で、小さなキッチンのため、まな板も包丁も小さめを使わざるを得ないなど、環境によって切ることが苦手になってしまう場合もありますよね。同じ料理の技術があっても、家やキッチンの環境によって「好きや苦手」が変わってくるので、なかなか問題解決は難しいところです。

一つ言えるのは、料理の好きなところと苦手なところが分かっているだけでも全然違うということ。切るのが好きなら「たくさん切るレシピ」、切るのが苦手なら「切らないレシピ」を選ぶこともできますよね。レシピの探し方も変わってくるかもしれません。ちなみに私のレシピは、「生野菜を切って、素材感を自分の目で見ながら料理したい人」に向いているかなと思います。

中辻 自分の好きな調理法に近い料理家さんを見つけるというのも、一つの方法かもしれませんね。

有賀 それはいいですね!アイスムに「こんな方にはこの料理家さんがオススメ!」みたいな情報があったら便利ですね!

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料理を好きになるには「料理を楽しむ」こと

中辻 アイスムでは「料理に正解はない」と考えていて、「~なければならない」をなるべく排除するようにしています。料理で「こうしなきゃいけない」って思っている人って、結構多いのではないでしょうか?

有賀 確かにそうですね。例えば「家族には定刻に栄養バランスの取れた食事を提供しなければならない」などでしょうか。「~なければならない」と思っていることがうまくできずに、罪悪感を抱えている人も多そうです。

料理を仕事にしている私だって料理が面倒な時はあります。そんな時は「ま、いいか、カップラーメンで」ってなります(笑)。でも「カップラーメンを食べてしまった、罪悪感がすごい」とは思わないですね。便利なモノには頼っていいと思います。

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有賀 私がスープ作家の仕事を始めて気づいたのは、「私は料理が好きだったんだ!」ということです。そんな私は「料理はここまでやらなければならない」とは考えていないです。料理が苦痛・嫌いと思っている人は、もしかしたら「~なければならない」とまじめに悩んでいる人なのかもしれません。でも、悩むということは料理について「向上心」をもっているということ。だから「素晴らしいこと」と捉えてほしいです。そして、料理を好きになる方法は一つしかなくて、「料理を楽しむ」しかないんですよね。

中辻 料理に限らず、初心者のころは新しい発見があって楽しいけれど、ある程度できてくると自分のできなさも分かってきて、壁にぶち当たりますよね。そこでつまずく人が多いと思うので、もったいないなとは思います。

有賀 もったいないですよね。そこまで「できるようになったこと」の方を感じ取ってほしいです。それが、「料理を楽しむ」ことにつながるのではないでしょうか。

そういう意味では、「10倍楽しむ」は数字を盛っている気がするので(笑)、「1.2倍」くらい楽しめればいいのかもしれません。毎日ごはんを作るのって大変だけれど、ちょっとだけ楽しさや驚きがあるだけで新鮮な気持ちで作れるんじゃないかと思います。

ズバリ!「おうちごはんを10倍楽しむ」には?

中辻 では、今回のテーマ「おうちごはんを10倍(あるいは1.2倍)楽しむ」には何をしたらいいでしょうか?

有賀 一つは「環境」を変えてみる。この『耳で楽しむおいしいスープレシピ』も、年に2回くらいアウトドアで収録しています。あれ、めちゃくちゃ楽しいんですよね!環境が変わるといつものスープも全然違うものに見えるので、特にキャンプはおすすめです。単発の料理教室に参加するのも良いですね。あとは、自宅や料理ができるレンタルスペースなんかに食材を持ち寄って、みんなで料理をするのも楽しいと思います!

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「アウトドア特別編2022」

中辻 普段のおうちごはんって「食べる」が目的になりがちですよね。食べるために作るから、やらなければならないタスクになってしまいます。「作る」方を目的にすると、もっとおうちごはんが楽しくなるのかなと思います。

有賀 そうですね。料理の目的っていろいろあって、「栄養・生きるため」「食べながらコミュニケーションをとるため」「食卓でお酒を飲みながらワイワイするため」「家族で団らんするため」など、すべて料理のもつ側面ですよね。毎日ごはんを作っている人は、楽しめと言われても楽しめない時があると思います。でも、料理を手助けしてくれるモノはいろいろあるので、割り切って頼りつつ、料理そのものは好きでなくても、「人と話すのが好きだから、今日はおしゃべりを目的に料理しよう」などと、目的を変えて楽しむのも良いかもしれません。

あとは、ホビー的な料理や調理グッズもいろいろありますよね。ソーセージや燻製、お味噌などを自分で作ってみるのもおもしろいと思います。私は、だしパックの食べ比べが楽しいですね。人間って「向上したい!知りたい!」という気持ちを本能的に持っているので、学びつつ楽しむ方法もあるのかなと思います。

中辻 「ひらひら野菜の豚汁」のレシピでは、ピーラーを使って豚汁に使う野菜の切り方を変える方法を紹介してくださいましたよね。お子さんと一緒に切っても楽しそうです。

有賀 他の人に切ってもらうと「そういう切り方もあったんだ!」と新鮮に感じられるかもしれません。「細かく切るのが面倒だと思っていたけれど、子どもがごろっと大きく切ったものが意外とおいしかった!」といった、小さな“アハ体験”を増やすのもいいですね。

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野菜をピーラーで切るレシピ「ひらひら野菜の豚汁」

新刊 『有賀薫のベジ食べる!』には、新しい味わいが満載!

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中辻 有賀さんの新刊『有賀薫のベジ食べる!』が発売になるそうですね!(文藝春秋/2023年3月発売)

有賀 はい!タイトル通り「野菜を食べよう」がテーマで、いつもの食べ方をちょっとずらしてみるようなレシピが載っています。例えば、レタスは生で食べることが多いですが、湯がいてみたらおいしく、逆に春菊は火を通すことが多いですが、生で食べるとおいしいなど。これまで私がスープを作り続けてきた中で、「こうすると野菜って全然違う味わいになる!」と発見したことを、ぎっしり詰め込んだ一冊です。野菜に対する思い込みが変わるようなレシピが満載なので、自分の作る野菜料理がマンネリ化してきたなという方にぜひ!

虫明 野菜一品でできる料理がたくさん載っていてありがたいと思いました。

有賀 冷蔵庫の残り野菜をなんとかできるレシピをたくさん載せました。例えば「なすのお焼き」は、薄い衣を付けてフライパンで焼くだけ。以前「さつまいものお焼き」としてレシピをご紹介したことがありましたよね!このように、一つ覚えておくといろいろな野菜に応用が利くレシピも載っていますので、ぜひ手に取っていただけたら嬉しいです!

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収録後、器の話で盛り上がりました。また次のトーク回で器のお話などもお届けしたいと思います!

「耳で楽しむおいしいスープレシピ」の感想や、有賀さんに話してほしいテーマなど、感想・リクエストフォームからぜひお送りください!

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撮影:木村琢也

アイスム座談会