樋口直哉さんに教わる、最高においしいにんじんの食べ方 

特集・旬を味わう

FOOD
2022.11.18

料理研究家の樋口直哉さんに「旬野菜の最高においしい食べ方」を考えていただくシリーズ、今回はにんじんです。様々な料理に欠かせない存在ではありますが、「余らせがちで困っていて…」なんて声も。樋口さん流の扱い方と料理法、ぜひ身につけて調理してみてください。

今回の食材:にんじん

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10月から12月にかけては、にんじんのハイシーズンです。柔らかさを楽しめる春にんじんもありますが、寒くなるにつれ増してくる、にんじんならではの甘みを存分に味わいましょう。それにはステーキにするのがおすすめ。にんじんの甘みは水溶性なので、ゆでずに焼く方がおいしい。今回は蒸し焼きにして火の通りを早くし、約10分で完成させます。

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教えてくれた人:樋口直哉さん

1981年東京都生まれ。服部栄養専門学校卒業。ロジカルで理知的なレシピ解説で人気を集める。作家としても活動し、2005年のデビュー作『さよならアメリカ』は第48回群像新人文学賞を受賞。近著に『もっとおいしく作れたら』(マガジンハウス新書)がある。

買うとき&保存のポイント

表皮が乾いていないもので、茎を切り落とした付け根のところがなるべく小さいものを選んでください。この軸からにんじんの真ん中を通る部分にはほぼ甘みがなく、にんじんはその周囲に糖分をたくわえます。つまり、軸の部分が小さければそれだけ甘みも強いわけです。また皮の部分にも甘みがあるので、むかずによく洗って使えばいいですよ。

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タテにしたとき、一番上の部分が“いかり肩”になって張っているものがよく成長したにんじんです。そして表皮をよく見てみると横に線が入っていますが、この入り具合が等間隔のものが、よく育った証です。

保存するなら、キッチンペーパーや新聞紙などでくるみ、さらにビニール袋に入れて口をしばって、野菜室に入れてください。にんじんに多く含まれるカロテンは光に弱いからです。約1週間を目安に使い切りましょう。

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さあ、それでは作っていきますよ。

にんじんの蒸し焼きステーキ 柿とくるみ添え


材料(2人分)

  • にんじん…1本
  • オリーブオイル…大さじ1/2
  • 水…100mL
  • 塩、こしょう…各適量
  • 柿とくるみのソース
  • 柿…1/4個
  • くるみ…5g
  • マヨネーズ…大さじ1

作り方

1. 茎の付け根部分を切り落とし、タテ4等分に切る。
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2. 直径20㎝のフライパンに、にんじん、水を入れてふたをし、強火にかける。沸いたら弱火にして10分ほど煮る。鍋中を時々確かめ、常に水がある状態を保つ。
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樋口さんポイント

にんじんの特性として、60~70℃でゆでると硬くなってしまいます。今回は水が少量で、すぐ沸くので水から火にかけていますが、煮物のときは沸騰してからにんじんを入れる、と覚えてください。
3. 柿は皮をむいて5㎜角に切り、くるみも同程度の大きさに砕く。ボウルなどにそれぞれを入れてこしょう少々をふり、マヨネーズで和えておく。
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4. にんじんに竹串を刺してスッと入ったら、オリーブオイルを加えて中火にし、表面に焼きをつけていく。
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樋口さんポイント

焼きつけることで、水に溶け出たにんじんの甘みを表面にまとわせます。香ばしさもアップしますよ。「焦がしてしまうのでは?」と恐れず、黒っぽくなる程度に焼きつけてOKです!恐れないでいきましょう。
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5. 皿に盛って塩少々をふり、③を添える。
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樋口さんポイント

もしあれば、粒の細かい塩を全体に軽くふり、粒の大きい塩少々をふってください。前者は全体の味つけになり、後者は食感のアクセントになります。

旬野菜の味わい方・にんじんのポイントまとめ

にんじんのフルーティな甘さを強調したくて、柿を添えました。季節感も出ますね。オレンジやマンゴーで代用するのもおいしいです。柿とくるみは相性がよく、よいコクも加えてくれます。マヨネーズではなく、ギリシャヨーグルトで和えるのもおすすめ!

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樋口さんおすすめ調理道具

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今回使った直径20㎝のフライパン、二人分の料理を作るのに何かと役立ちます。26㎝のものを使っている方が多いかと思いますが、20cmのものを一つ持っておくと便利ですよ。にんじんをタテのまま使う時にちょうどおさまりがよく、効果的に焼くことができます。フライパンに限らずですが、料理の量に応じた調理道具を使うことは、おいしさを引き出す上でとても重要です。

じっくり焼いて、軽く焦げめのついたにんじんの深い甘さに驚かされました!柿とくるみのソースも実にしゃれた味わいで、にんじんの甘みを引き立ててくれます。樋口さんにはまた野菜の最高においしい食べ方を教えていただく予定です。みなさまどうぞ、お楽しみに。

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取材・文:白央篤司
撮影:キッチンミノル

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