せりとホタルイカのナムル

ボルサリーノ関好江の笑食同源おしゃべりごはん #1

FOOD
2020.04.27

ボルサリーノ関好江の笑食同源おしゃべりごはん

「関さんの作ったごはんを食べると元気になる!」と大評判の芸人、ボルサリーノ関好江さん。本連載では、そんな関さんに料理を作ってもらいながら、おいしさのポイントなどをじっくり伺います。今回のメニューは「せりとホタルイカのナムル」。調理時間は約10分。難しい工程はゼロ。ササッと作れるのに、震えるほどおいしくて、栄養もたっぷり。お酒にもごはんにもよく合う……という、いいことずくめな春の旬たちのコラボです。


材料(2人分)

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  • せり…1束
  • ホタルイカ(ボイル)…1パック
  • 生姜…1片
  • 塩昆布…10g
  • ごま油…大さじ1
  • 白すりごま…大さじ1
  • 柚子胡椒…お好みで

作り方

1. せりは、塩(分量外)を入れた熱湯でさっと茹で、水にさらして絞り、食べやすく切る。生姜は細切りにする。
2. ホタルイカは目、口、軟骨をとる(やらなくてもよい)。
3. すべての材料をボウルに入れ、調味料であえて完成。

春の皿には苦味を盛れ

ナムルというと、野菜などをごま油や調味料で和えた韓国料理ですが、そこに塩昆布ときざみ生姜を入れるのが関さん流。今回はそこにせりとホタルイカをたっぷり和えていきます。

「せりって、競(せ)り合うように生えるんですって。ぎゅーって。そこから『せり』という名前がついたんだそうです。」と関さん。

七草粥に入れる食材として知られるせりですが、最盛期を迎えるのは春。夏に花をつけるため、春先に柔らかい芽をぐんぐん伸ばします。

「『春の皿には苦味を盛れ』という言葉が昔からありまして。苦味にはデトックス効果があるんですね。苦味のある春野菜を食べることで、冬の間に溜まった老廃物を、体外に出すと良いとされているんです。」

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ホタルイカの「丸ごと」感も、今回のレシピのポイントといいます。

「丸ごと食べられる旬のものがあるといいなと思ったんです。丸ごとのものって、いわばパワーの塊なので、元気がでるんです。それにホタルイカって、贅沢な感じなんですよね。お得なのに高級感もある。」

ぷっくり丸みを帯びたホタルイカ。そんな姿を見つめながら関さん、「ホタルイカは好きで、家でも外でもよく食べるんです。ふふ、ホタルイカ。かわいらしい。」とにこにこしながら下ごしらえを始めました。

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調理する上で大切なのは、ホタルイカの目と口と軟骨を取り除くこと。

「やらなくても食べられなくないんですが、やることで、ゴリっとした食感がなくなって、食べ応えが変わるんです。おもてなしといいますか。」

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口は足の内側についているので、ホタルイカを上下ひっくり返して取り除けばOKです。

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せりの茹で時間は30秒

せりは、きちんと洗えば根っこまで食べられます。「根っこ、おいしいんですよね。」と愛おしそうに根っこを見つめる関さん。せりの一大産地、仙台を訪れた際のエピソードを話してくれました。

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「街を歩いていたら、みなさん口々に『せりはもう食べた?』『根っこも食べた?』と聞いてくださって。」

とにかく行く先々でせりを勧められたのだそう。仙台市民の方々のせり愛たるや。そんななか、関さんはは老舗の料亭でせり鍋を食べたのだそうですが……

「お店の個室には、厨房に通じる小窓があって。わたしたちがせりを茹で始めると、その小窓がガッと開くんです。それで、『はい!せりを食べ始めたらもうしゃべらない!』『しゃべるのはあと!』って、女将さんから指導が入るんです。めっちゃきびしいんですよ。それだけ茹で加減が命なんです。」

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せりの茹で時間は30秒でOKだそう。お水に塩をいれて火にかけ、沸騰したら一気に投入して、一気に取り出します。隣で見ているとほんとうにあっという間。茹ですぎないことがとにかく重要です。

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生姜は皮むきしなくてもOK

次に生姜を千切りにしていきます。ここでのポイントは生姜の皮むきをしないこと。

「皮に香り成分や栄養成分があるので、皮むきはしないんです。もし痛んでいるところがあったら、そこだけスプーンでカリカリと削りとればOKです。」

量は、たっぷりと惜しみなく。

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「生姜、めちゃくちゃ好きでたくさん入れちゃうんですよ。わたしの料理食べ慣れている人には、生姜の味が効いていると『あ、関さんっぽいね!』と言われます。」

そこに塩昆布とごま油、白ごまを加えて……

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ガッとひとまぜしたら完成です。辺りいっぱいにごま油の香ばしい香りが漂ってきました。うう。口にせずとも、匂いだけですでにおいしい……。

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せりのみずみずしい緑色と、ホタルイカの鮮やかな赤むらさき色もまた、食べるまえから「おいしい」を確信してしまうほどに、ほうっとなる美しさ。それでいて、口にすると、その想像を上回るおいしさが加速度を上げてぐいぐいと迫ってきます。

せりのシャキシャキとした歯応え。噛むたびに鼻の奥や喉のあたりに広がるみずみずしい香り。ホタルイカのエッジが効いた旨み。たっぷり入れた生姜も、塩昆布も、味の層をより深いものにしてくれています。これはもうお酒を……くいっと飲みたい!

「確かにお酒がほしくなる味ですよね。でもお酒に合うものって、ごはんにも合うものが多いんですよ。」と関さん。

はっ。確かに。焼き鳥やイカの塩辛、出汁巻きたまご、なめろうなどなど、数多くの酒の肴は、実はごはんとも相性バツグンですね。

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ちなみにこのレシピ、根本から覆してしまうようで恐縮なのですが、ホタルイカやせりがない時には、別の食材で試みるのもおすすめです。なぜならば、塩昆布と生姜、ごま油による味付け自体が万能だから。汎用性がばつぐんに高いのです。

「本当になんでもいけます。ホタルイカの代わりに砂肝やたこ、鶏肉などを入れてもいい。せりの代わりに、菜の花や春菊を入れてもOKです。」

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今年の春は、季節のふとした機微に触れる機会をほとんど持てないまま、過ごしている人も少なくないのではないでしょうか。だからこそ、せめて食卓のなかで、ちょっとでも春を堪能できたら。今年は富山湾でのホタルイカの水揚げが好調で、例年に比べ、スーパーで手に入れやすくなっていると聞きました。家で楽しめるご馳走、ぜひ楽しんでみてください。

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取材・文・イラスト:ネッシーあやこ
撮影:美坂広宣(SHAKTI)
フードスタイリング:吉村佳奈子(Smile meal)

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