アジカン伊地知潔さんのレシピ「鶏肉飯(ジーローハン)」を作る
料理研究家リュウジさんとゲストがお互いのレシピをトレードし、料理をしながら語り合う本連載。今回のゲストは、ロックバンド「ASIAN KUNG-FU GENERATION」のドラマーであり料理研究家としても活躍する伊地知潔さん。リュウジさんとは2年前に出会って以来、たびたび料理談義を交わし合う仲だといいます。
リュウジさんが選んだ伊地知さんのレシピは、台湾の屋台メシ「鶏肉飯(ジーローハン)」。手順も食材もシンプルでありながら、たっぷりアジアを堪能できる一品です。
鶏肉飯(ジーローハン)
材料(作りやすい量)
作り方
- 1. 長ねぎを小口切りにする。青い部分はあとで使うのでとっておく。鶏もも肉は余分な脂をとり、フォーク等で皮面に数か所穴をあけて塩・こしょうをしておく。
- 2. 耐熱皿に鶏もも肉、ねぎの青い部分、しょうがスライスをのせて紹興酒(料理酒)をふりかける。ふんわりとラップをかけて、電子レンジ(600W)で5分ほど加熱する。冷めたら鶏肉をフォークや手でほぐす。耐熱皿に残った汁はあとで使うのでとっておく。
- 3. フライパンににんにくのみじん切り、しょうがのみじん切り、ごま油を入れて中火で1分ほど加熱し、小口切りにしたねぎを加えてよく炒める。シュワシュワと音がしてきたら弱火にし、2で耐熱皿に残った汁と(a)を入れてひと煮立ちさせる。
- 4. 器にごはんを盛り、2の鶏肉をのせて3をかけたらできあがり!
台湾の絶品屋台メシ「鶏肉飯(ジーローハン)」

恥ずかしながら、潔さんのレシピを見るまで、鶏肉飯(ジーローハン)を知りませんでした。料理研究家なのに。

台湾というと、豚肉を甘辛く煮た魯肉飯(ルーローハン)が有名だけど、現地では鶏肉飯(ジーローハン)もよく食べられているんだよね。意外とみんな知らない。
現地で食べたものを自分流に再現したのがこのレシピです。見た目は地味だけど、あっさりしていて驚くほどおいしい。

魯肉飯とは作り方が全然違うんですね。

調味料も全然ちがう。

楽しみです。あえて予習はしていません。

大丈夫です!

まずにんにくとしょうがをみじん切りにします。

にんにく、潰してから切っても大丈夫ですか?

大丈夫です。(包丁の腹で勢いよくにんにくを潰すリュウジさんを見ながら)すごいなぁ。

僕、慣れちゃってて。

できない。こわくて。

けっこう言われます。包丁だとこわいから、皿とかでやるっていう人もいますね。みじん切り、けっこう細かめに切る感じですか?

うん。このくらい(写真参照)で大丈夫。ところでリュウジくん、かなり忙しいと思うんだけど、新しい料理を研究したり生み出したりする時間はあるの?

ありますよ。バリバリやってますよ。

ひとりでやっているの?

はい。ひとりでやってます。むしろひとりじゃないとできない。

そうなんだ。それはすごいよ。ずーーっとキッチンにこもってるってことでしょ?

そうですね。ちょっとおかしいんです。熱がずっと冷めない。キッチンに立って、新しい料理を作っているときが一番「おれ、料理しているなぁ」っていう気持ちになるんです。
鶏肉は電子レンジで蒸すとおいしい

にんにくしょうがを切り終えたら、次は長ねぎを小口切りにします。

ねぎはどのくらいでしょう。

けっこういっぱい入れて大丈夫。青い部分は、鶏肉を電子レンジで蒸すとき用に取っておく感じで。

このレシピ、潔さんには珍しくレンジを使うんですね。

そうなんだよね。鶏肉は電子レンジで蒸すとおいしい。鶏肉は水分を多く含んでいるから、蒸すとやわらかくなるんだけど、レンジは「蒸す」ことにすごく向いていて。

鶏肉の味付けのベースは塩こしょう?

いや、こっちかな。紹興酒。

紹興酒!
大瓶で売られているイメージの紹興酒ですが、実は180mLなどのミニサイズもあって便利!

そうなの。紹興酒を入れると味がすごく変わるの。塩こしょうは、鶏の出汁を出すためにふるんだけど……表裏しっかりふる感じで。

あと、鶏肉にフォークをぷすぷすって刺して、穴を開けておきましょうか。

ですね。電子レンジでやる前に、これをやっておくと火の通りがよくなる。

で、スライスしたしょうがとねぎの青い部分を添えて、紹興酒を注いで、ふんわりとラップをかけて電子レンジに入れる……5分でいいかな。

あ、ここでもうレンジに入れるんですね!調理工程自体は、かなり簡単じゃないですか?

はい!
ねぎは“柴犬色”になるまで炒める

鶏肉を電子レンジでチンしている間にたれを作ります。

火は何火ですか?

中火かな。まずはにんにくとしょうがを炒めて、香りが出てきたら小口切りのねぎを入れて……

ほおお〜〜。こんな風にねぎをしっかり炒めること、あんまりないですわ。

玉ねぎもそうだけど、じっくり火にかけると、うまみ調味料みたいな味が出るんだよね。揚げ焼きするような感じで、柴犬色になるまでしっかり焼いていきます。

いま「柴犬」って言いましたか?

はい。柴犬色はね、リュウジくん用語。

潔さんは、僕のYouTubeを結構見てくれているんです。

ファンなんです(笑)。

僕もファンですよ(照)。

ちなみにフライパンは、もしあるなら、小さいやつを使うのがおすすめ。

なるほど。そうですよね。フライパンが大きいと、ねぎが油に浸りにくいですもんね。

そうそうそう。

(炒めながら)これはうまいわ。潔さんはこういう小技をしっかり効かせてくるんですよね。

やると味が全然違うんだよね。……あっ、ここからはもうちょっと弱火の方がいいかも。

(火を調整しつつ)ねぎ、しっかり炒めると香りが全然違いますね。
鶏肉から出た汁はぜんぶ使う

ねぎにしっかり焼き色がついて、シュワシュワと音がしてきたら、砂糖を入れます。それから電子レンジであたためていた鶏肉を取り出して、耐熱容器に残っている汁をぜんぶ入れる。で、弱火でちょっと煮詰める。

汁を……!これはうまいでしょ!少しとろみが出てくるくらいまで煮詰める感じですか?

ですね。あとは、味をみながら少し塩を加えて……

(味見して)うまい!!
鶏肉はほぐし身にする

鶏は、ほぐし身にしたいんです。カニみたいに。ほぐした方が、ソースがよく絡むし食感もいいんですよね。

あーーー!ほぐすんですね。ちょっと海外のフードコートっぽいですね。ハワイにそういうフードコートあるんですよ。蒸した胸肉を割いて、ごはんの上にのせて……

そういう感じ、そういう感じ。最初は包丁で少しスライスしたあと、フォークでぐちゃぐちゃぐちゃってやると良いと思う。

フォークだけでもいけそうな気がしますね。

フォークだけだと、ちょっとめんどくさいかもしれない。

全然やれますよ。楽しい。あーーーこの調理法いいなぁ。僕、フォークでほぐして食べるという調理法、したことないなぁ。わ!かなりいい感じなのでは。すっごいやわらかい!

結構手間ですよね。

いやいやいや(笑)。

リュウジくんにこういうことやらせるのは申し訳ない(笑)。

ややや、やりますって。やりたい!

こんな感じですかね。はい!
王道のつけあわせはたくあん

鶏肉飯の王道のつけあわせは、たくあんなんです。もしくはたまご。

たくあん!

(たくあんを添えながら)たくあんの黄色が映えてすごいうまそうだ……もう食べる前からわかります。うまいでしょうこれは。


いただきます。

あっ!鶏やわらかっ!!!うーーーん!たれもめっちゃうまい。

魯肉飯と比べると、かなりさっぱりしているよね。魯肉飯に飽きた時にこれを食べるっていうイメージなんです。

めっちゃうまい!工程的にはすごい簡単なのに……!たれの材料も、にんにくとしょうが、しょうゆ、ねぎ、砂糖、鶏から出た汁だけですよね。すごくシンプル。だけどうまいです。(味わいながら)これは紹興酒使いたいな。

ね。紹興酒が効いている。

紹興酒、僕も自分のレシピで使いたいんですよね。でも、まだ踏み込めていないんです。「このレシピを作るために紹興酒を買ってください」って、なかなか言いづらくて。余ったとき、自分だったら飲んじゃうけど、お酒飲まない人もいますし。
でも、こんな風に使えるなら、買っておいてもいいのかもしれない。
……それにしても、鶏肉がすげえやわらかいことにびっくりです。ぷるぷる感と身のホロホロ感がちょっとこう、混じりあって楽しい。むしろレンジの方がいいのかなぁって。日本にはあんまりないですね。こういう料理。

日本ぽくない食べ方ですよね。

僕、こういうごはん、すごく好きです。自分が知らない味や、知らない土地の食べ物。「こういう作り方をするんだ!」っていう驚きが欲しいんです。

リュウジくん、会うたびに言ってる(笑)。

通じると思うから、潔さんには言っちゃう。

僕は、ツアーで各地のおいしいものに出会うと、再現したいなと思っちゃうんです。その場所でしか食べられないものって沢山あるけど、ヒントを教えてもらいつつ作ってみたら、家でも再現できるかもしれないから。
自分なりのアレンジを加えつつ、手を動かしてみると、それなりのものができるんですね。もし再現できていなかったとしても、何かしら新しいものができる。それでまた自分の料理のレベルがあがって知識も増える。

一流のアーティストでありながら料理もこんなにできるなんて、天は二物を与えましたね。

音楽と料理は、頭の使い方が似てるんですよ。自分の持っている引き出しをどう使い、どう料理するか。まったく一緒なの。逆にリュウジくんは音楽できると思う。

えっ、ほんとですかね!でも、………ああ……そうなのか。僕、音楽はやっていないけれども、音楽自体はすごく好きで。もしかしたら、作っている人の感覚は想像できるかもしれません。

最後に。このままでもうまいんですけど、ちょい足しのアレンジをさせてください。五香粉を加えて、味変してみます。味変カンフージェネレーション。

(笑)。

五香粉は結構ね、香りが強いんで、本当に少し、ぱらぱらでいいと思います。結構アジアンな香りになるはず……。

(食べる)あ!!この味、かなり好きですね〜〜。

さらに台湾だ!アジア感がすごいですね。