「至高のハンバーグ」をアジカン伊地知潔さんが作る

リュウジのレシピトレード #4 後編

2021.04.14

料理研究家リュウジさんとゲストがお互いのレシピをトレードし、料理をしながら語り合う本連載。今回のゲストは、ロックバンド「ASIAN KUNG-FU GENERATION」のドラマーであり料理研究家としても活躍する伊地知潔さん。伊地知さんが選んだレシピは、リュウジさん曰く「僕のレシピの中でも特に複雑」という「至高のハンバーグ」。そこにさらに伊地知さん風にアレンジを加え、刻んだ砂肝を混ぜています。

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至高のハンバーグ

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材料(作りやすい量)

  • 牛豚合挽き肉…300g
  • 玉ねぎ…1/2玉(約100g)
  • 卵…1個

  • バター…10g
  • 塩…少々
  • 黒こしょう…少々
  • コンソメ…小さじ2/3
  • パン粉…大さじ4
  • 粉ゼラチン…小さじ2
  • サラダ油…少々
  • 水…大さじ3(※)
  • 牛脂…2個(※)
  • 蒸し焼きの際に
  • 水…50ccほど
  • ハンバーグソース
  • 酒・醤油・みりん…各大さじ2
  • 味の素…2振り
  • にんにく…1片
    ※酒はウイスキーやブランデーに変えてもOK
  • 伊地知流・アレンジ
  • 砂肝…4個
  • 水…大さじ3→大さじ2に変更
  • 牛脂…2個→1個に変更

作り方

1. バターを溶かしたフライパンに、みじん切りにした玉ねぎを入れて、焼き目がつくまで炒める。途中で塩(少々)をふると、早く仕上がるのでおすすめ。
2. 冷蔵庫から取り出したひき肉をボウルに入れ、粗熱をとった玉ねぎ、コンソメ、パン粉、塩、黒こしょうを加える。
3. 袋に入ったままの牛脂を手で揉んでやわらかくし、細かくちぎって2に加える。さらに卵、水、粉ゼラチンを加え、手早くこねる。
4. 3のタネを2等分して、空気を抜きながら小判型に成形する。
5. フライパンに油をひき、4を入れて弱火で焼く。
6. 両面1分ずつ焼いて焦げ目をつけたら、水を加え、蓋をして4分蒸し焼きにする。
7. 器に盛りつけ、【ハンバーグソース】の材料を同じフライパンで煮詰めてかける。

かなり細かいレシピ

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リュウジ

トレードするレシピに「至高のハンバーグ」を選んでくれてすごく嬉しいです。このレシピ、かなり計算しながら作っていて、思い入れのあるレシピなんです。結構めんどくさいんですけど。僕のレシピのなかでも、難易度トップ3に入ると思う。

伊地知

ほんと!

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リュウジ

まず、玉ねぎを切るんですが、みじん切りしたあと一度炒めます。玉ねぎだけ先に炒めてしんなりさせることで、やわらかい食感のハンバーグを作るんです。

 

あ、合い挽き肉は出番がくるまで冷蔵庫に入れておきましょうか。基本、料理で使うお肉は常温の方が良いんですが、このハンバーグは冷たいお肉で作る方がいいんですよ。温度が上がると肉汁が出てきてしまうので。

伊地知

(半分に切って玉ねぎの皮をむき始める)

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リュウジ

玉ねぎの切り方ひとつとっても、人によって結構違いますよね。

伊地知

違いますよね。全然。

リュウジ

僕は先に玉ねぎの上下を切り落としてから皮をむいています。みじん切りはけっこう細かめに刻んじゃってください。玉ねぎを炒めるのにはバターを使います。

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伊地知

バターを溶かしてから玉ねぎを入れる感じ?

リュウジ

溶かす前に玉ねぎを入れちゃっても大丈夫です!

 

あと、ここでちょっと塩を振ります。浸透圧でしなっとさせるんです。…「浸透圧」という言葉を使うくらい、本気のレシピです。

伊地知

(笑) いいにおい。

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リュウジ

玉ねぎの水分は飛ばしちゃいます。そうしないとタネがゆるくなっちゃうので。軽く色づいて、玉ねぎのかさが最初と比べて約4分の1くらいになったところで炒め終える感じで大丈夫です。

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リュウジ

で、炒めた玉ねぎは、粗熱をとっておきましょう。このレシピ、粗熱をとる必要があるんですよ。すいません。めんどくさくて。僕にしてはちゃんとやってるレシピなんです。

伊地知

リュウジくんの口から「粗熱を取る」という言葉を聞くのは、なんだか新鮮です(笑)。

アレンジで砂肝を入れる

リュウジ

今回、潔さんに何かひとつアレンジを加えてもらうことになっているのですが、ハンバーグのタネに砂肝を入れるんですね。

伊地知

崩れちゃうかな?

リュウジ

大丈夫だと思いますよ。たぶん、つくねのような感じでおいしいと思うな。

伊地知

至高のハンバーグに入れるので、銀皮(砂肝を包んでいる外側の薄い皮)はとりましょうか。リュウジくんはふだん銀皮はとりますか?

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リュウジ

気にする人もいるので、レシピではとるようにしてます。でも、自分で食べるのであればとらないかな……っていう。このハンバーグは銀皮とった方がおいしいかもしれません。そういえば潔さん、YouTubeのチャンネルで砂肝のおつまみ作ってましたよね。

伊地知

してました!

リュウジ

映像きれいですよね。

伊地知

そのためにあの場所でやってるんです(笑)。何もないところなんですよ。キッチンも水道も換気扇もないという……。

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牛脂はちぎりながら入れる

リュウジ

つぎにタネをこねます。ボウルのなかに、粗熱を取った玉ねぎ、挽肉、調味料を入れていきます。砂肝も入れちゃいましょう。塩は、砂肝があるのでちょっと強めに振ってもいいかもしれない。あと、パン粉も入れます。

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伊地知

パン粉、結構入れますね!

リュウジ

はい。これがやわらかいハンバーグのもとになるんです。コンソメ、黒こしょう、牛脂も入れていきましょうか。牛脂、ビニールの上から触ってみてください。やわらかいですかね。やわらかければ、手でちぎりながら入れる感じで……

伊地知

ちぎりながら!

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リュウジ

そうなんです。ダマにならないように、なるべく細かくして入れるんです。硬い場合は包丁で刻んでから入れると良いです。

伊地知

へーーー!

リュウジ

たまごは、もうそのまま割り入れちゃって……

伊地知

(割る)

リュウジ

水は、通常のレシピだと大さじ3入れてるんですけれども、一旦大さじ2入れて様子をみたほうがいいかもしれない。

伊地知

はい(水を入れる)

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リュウジ

水は、コンソメと合わさってコンソメスープみたいな感じになるんです。それで、ハンバーグの内部にコンソメスープが蓄えられるんですね。

伊地知

ほう〜〜なるほどね!

リュウジ

あとゼラチンを入れたら、冷たいうちに手早くこねていきます。牛脂がまんべんなく行き渡るよう、しっかりもみこむような感じで。もしお肉が緩いと感じたら、一旦冷凍庫で少し冷やしてからこねても良いです。

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伊地知

(かなりよく揉んでいる)けっこう粘り気がでてきました。

リュウジ

そうしたら、次は形成なんですけど、大きいと、焼いているうちに割れてしまう可能性があるので、心配なら3つに分けてもいいかもしれない。

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伊地知

じゃあ3つに分けましょうか。(と言いながら、パンパンという音を鳴らし、タネの空気を抜きながらハンバーグを形成する)

リュウジ

さまになりますね〜〜!

伊地知

いやいやいや(照)。タネの真ん中にくぼみは入れる?

リュウジ

はい。僕は入れるタイプですね。肉の中心には熱が入りにくいので、へこませて、火を通りやすくしています。

焦げつきやすいので弱い火でじっくり焼く

リュウジ

続いては、両面に焦げ目をつけていきます。火加減は、弱めの中火が良いです。ゼラチンが入っているから焦げやすいんです。

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伊地知

そうなんだ!ゼラチン、どのくらい入れたんだっけ。

リュウジ

小さじ2です。

伊地知

その量でも焦げつくんだ。

リュウジ

そうなんですよ。

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伊地知

(ハンバーグの焼け具合をじっと見守る)。

リュウジ

どうですかね、焦げ目……おっ、完璧な焦げ目ですね!

伊地知

やった!

リュウジ

焦げ目がついたら、水を入れて、4分くらい蒸し焼きにします。

伊地知

水の量はどのくらい……?

リュウジ

50ccくらいですね。それで、蒸し焼きにするときは弱火です。

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伊地知

弱火でいいんだ、意外です。焼き目つけるときは強火で、カリッてやっていたから。

リュウジ

最後はフォークをさして、赤い汁がでなければOKです。透明だったら大丈夫。

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伊地知

できました!

リュウジ

きれいにできましたね!美しい!そうしたらお皿に移して……最後、ソースを作ります。さっき使っていたフライパンを洗わずに、もう1回あたためて、にんにくから入れます。

伊地知

じゃあ、いきまーす。

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リュウジ

調味料を入れたら、一気に煮詰めちゃう感じで大丈夫です。少しとろみがついたら火を止めます。

伊地知

これはもうかけちゃって大丈夫?

リュウジ

かけましょう!スプーン2杯分くらいかな。おお〜うまそうだな!僕が作ったのよりきれい。完璧だ!

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噛んだときに初めて肉汁に出会う

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リュウジ

あ、うまっ!

伊地知

うまい!

リュウジ

砂肝いいっすね。これ。すごいマッチしています。

伊地知

軟骨とはまた違った、コリコリとした感じ。

リュウジ

なんだろう。ミートローフじゃないですけど、パテっぽい感じがしますね。おつまみにするのなら、砂肝入りの方がいいかもしれない。主張しすぎない、コリっとした食感。いいですね。砂肝ありです。

伊地知

あり、いただきました!

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リュウジ

これはおいしい……。

伊地知

そもそもハンバーグ自体がうまいよね。めっちゃジューシー。こだわりがすごい。思った以上に凝ってましたね。

リュウジ

はははは(笑)。

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伊地知

うそでしょって思いました(笑)。玉ねぎ炒めるんだ、粗熱も取るんだ……って。でも食べてみるとわかる。玉ねぎのシャキシャキした食感はいらないんだって。

 

ふわっふわしてて、やわらかくて、砂肝のさくさくしてる食感だけが残る。あと、切ったときに肉汁がでないんですね。

リュウジ

潔さん、わかってる!ゼラチンを入れることで、わざと出ないようにしているんです。

 

肉汁って口の中で弾けた方がおいしいんですよね。だから、切った時に肉汁がばーーっと出てしまわないように、噛んだときに初めてジューシーだと感じられる工夫をしています。

実はかなり歴史の長いレシピ

リュウジ

元々このハンバーグは、レストランで出すために開発したレシピなんです。料理研究家になる前……23歳か24歳の頃、料理人を目指していて。

伊地知

へー!

リュウジ

お店の名物ハンバーグみたいになればいいなと思って考えました。

伊地知

お店クオリティだもんね。

リュウジ

潔さんにそう言ってもらえると、救われます。僕の中では、ものすごく思い入れの深いレシピ。かなり試行錯誤を繰り返して今の形になっているので、選んでくれたことが本当にうれしかったです。

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伊地知

リュウジくんは、本当はめちゃくちゃ手の込んだ料理ができるんですよね。それを知ると、ふだんTwitterとかで発信している「なるべく簡単に作ることのできる」レシピが、かなり考えた上で展開されていることがわかって、すごくかっこいいなぁって思う。

リュウジ

いやいやいや。

伊地知

実は難しいことぜんぶできるじゃん、でっかい生ハムも切れるじゃん。

リュウジ

潔さんはなんといいますか、人の舞台に合わせられるというか。この前、僕の家で一緒に料理をしたときも、僕の方向性に合わせてくれていると感じたんですよね。そういう感覚が、人柄にも表れていて、すごいなと思っています。

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伊地知

(照)。

リュウジ

あととにかく、話してて楽しい!

伊地知

ふたりで延々と何時間も語れるよね。

リュウジ

この前は話し足りなかったくらいです。お互いの家がちょっと遠いから、長居できなかったんですよね。今度、潔さんのお宅にもおじゃまさせていただきたいです。

伊地知

ぜひぜひぜひ。

前編はこちら

リュウジ

「今日食べたいものを今日作る」をモットーに、忙しい現代人の救世主になるべく時短、簡単レシピを公開し続ける料理研究家。著書『バズレシピ』は第5回、 第6回レシピ本大賞連続入選。

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取材・文:ネッシーあやこ
撮影:猪原悠(TRON)

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