山本ゆりさんの「ザクザク塩レモンチキン」を作る
料理研究家リュウジさんとゲストがお互いのレシピをトレードし、料理をしながら語り合う本連載。今回のゲストは、「syunkonカフェごはん」シリーズが大人気の山本ゆりさんです。
以前から親交のある二人。リュウジさんはゆりさんとのレシピトレードを熱望していましたが、山本さんが関西に住んでいるためなかなか実現できず、今回は念願叶っての共演です。テーマは「おもてなし料理」。お手軽レシピの印象が強い二人ですが、どんなおもてなし料理を見せてくれるのでしょうか?
このレシピトレードの様子はリュウジさんのYouTubeチャンネルでもお届け。YouTube初出演のゆりさんにも注目です!
ザクザク塩レモンチキン
材料(2人分)
作り⽅
- 1. 鶏肉を大きめの一口大に切ってフォークで穴をあけ、ポリ袋にAとともに入れてもみこみ、15分以上おく。別の袋にBを合わせておく。
- 2. Aの袋に小⻨粉を入れてもみこみ、Bの袋にうつし、しっかりまぶす。
- 3. フライパンに揚げ油を1cmの深さまで入れて中火で熱し、2を入れる。
こんがりしたら裏返し(はねる時はペーパータオルをかぶせる)、弱〜中火で 3〜4 分揚げ、油をよく切る。 - 4. 合わせたC、好みでパクチーを添えて盛る。
同い年でお酒好き…共通点の多い2人
僕、ずっとこの連載のゲストとしてゆりさんに来てほしかったんですよ。なんたって料理研究家の大先輩ですから。
そんな、ぜんぜん先輩じゃないです。同い年ですし!
同い年だけど、歴が違うじゃないですか。ゆりさん、いつから料理研究家やってます?
いつやろ…ブログを始めたのは2008年です。
僕は2017年。僕ね、料理研究家として駆け出しの頃、ゆりさんのレシピを見て勉強していたんですよ。だから大先輩です。
いやいやいや(笑)。でも同い年やし、敬語やめましょう!
そうしましょう!僕ら、同い年、人見知り、八重歯という共通点があるんですけど、もうひとつ大きな共通点があって…それは、お酒が好きだってこと。というわけで、今日はさっそく乾杯しちゃいましょう!
乾杯!
ゆりさん、今日は何を教えてくれるの?
ザクザク塩レモンチキンです!
ザクザクか。塩レモンチキンは僕もやったことあるけど、ザクザクはないかも。レシピ見たけど、ゆりさんのレシピにしてはちょっと工程が多い感じだね。
そうなんです。今日のテーマが「おもてなし料理」って聞いたから。
あ、そうだ!テーマ忘れてたわ(笑)。僕もゆりさんもお手軽レシピで知られてるけど、そんな僕らがおもてなし料理を作ったらどうなるのか、やってみたいと思います。
小麦粉と片栗粉のW使いがポイント
先生、よろしくお願いします!
先生ちゃうし!私、本当に教えるのが下手なんで。
でも、テレビでDAIGOさんに料理を教えてるじゃん。
DAIGOさんは器用な方ですし、覚えるのも早いんで、私はほぼ横で見てるだけです(笑)。
料理を覚えられるのは、それだけゆりさんのレシピが完成されてるってことだよ。
じゃあ、まずは鶏もも肉を一口大に切ってください。お好みの大きさで。
酒飲みはね、ちっちゃいほうがいいの。
わかる!ちょこちょこつまみたいですよね。
切ったら、鶏もも肉にフォークで穴を開けてください。穴を開けることによって味が染み込みやすくなって、下味をつける時間を短縮できます。
出た、時短テクニック!
鶏もも肉1枚にしっかり味を染み込ませるのに、本当だったら2時間かかるって言われてるんです。でも私、2時間も待てないから(笑)
ゆりさんのレシピはこういう説明が分かりやすいんだよね。
穴を開けたら袋に鶏肉と調味料を入れてよくもみこみ、15分ほどおいておきます。
ゆりさんの調味料の配分って分かりやすいよね。僕は「小さじ1/3」とか書くこともあるけど、ゆりさんはだいたい1とか2とかにする。
でも、リュウジさんのレシピはこだわりが伝わってきて好きですよ。絶対おいしいのがわかります。
はい、もみこみました!
この間に、もう一つの袋に片栗粉大さじ6と調味料を入れてください。黒こしょうは大人が食べるんやったらこの時点で衣に入れちゃうし、子どもが食べるんやったら入れずに、お肉を揚げてから、大人が食べるやつだけにかけます。
さすが!ゆりさんは家庭があるから、子どもが食べるときのこともよく気が付くよね。
いや、別に気にしなくてもいいと思うんです!でも「子どもが食べても辛くないですか?」って聞かれることが多いんで、一応。
僕もよく言われる。僕も、もしも子どもができたら変わってくるんだろうなぁ。
15分経ったら、鶏肉の袋に小麦粉を大さじ4入れます。ここがポイントで、片栗粉と小麦粉を両方使うんですけど、先に小麦粉を入れてお肉にもったりとまとわせるんです。
大さじ4ってけっこう多いね。
そう、衣を分厚くしたくて。
すごい、僕がやったことない調理法だ。僕、お肉はだいたいバットで下味つけて、粉もバットでつけるから。
バットでやったら粉がこぼれへん?
そう、周りが粉だらけになる。しかもバットに粉が残るからもったいないんだよね。その点、ゆりさんの袋はすべてを解決する。すごいわ、これ。
では、片栗粉の袋の中にお肉を入れて、粉をまぶしてください。一気に入れると団子みたいになって粉がつかない部分が出てくるんで、半分ずつ入れてください。
これ、最初に小麦粉をもみこんでるからかなり衣にボリュームが出そう。
手が汚れるけど、手を使ってしっかり粉をまぶしてください。今回、お肉を小さく切ったぶん表面積が増えてるから、片栗粉が足りないかも。足りなかったら足してくださいね。
うん、いい感じ!
揚げるときもちょっとした小技が!
では、揚げ焼きにしていきます。
油、少ないですね。
いっぱい使ったほうがおいしいのは分かってるんですけどね~(笑)。
じゃあ、揚げていきますね。火加減は中火くらい?
弱めの中火くらいで。
こんがりしてきたら裏返します。
めっちゃいいじゃん。いい感じ、いい感じ。
油がハネるときは、鶏肉の上にペーパータオルをかぶせるの、オススメです。そうするとハネてこないし、ふたじゃないから蒸気がこもらない。市販の網のカバーもいいんですけど、ベタベタして洗うの大変なんで。
あ、本当だ。すげぇ!目からウロコだわ。
ただ、絶対にペーパータオルがフライパンの外に出ないよう気を付けてください。引火したら大惨事になるんで!
いい感じに揚がった。これはうまそうだな。
ほんと、いい揚げ色!
味のポイントになるハニーレモンマヨソース
じゃあ、ソースを作ります。最初に牛乳とマヨネーズを混ぜたほうが分離しなくていいかも。
牛乳とレモン汁は分離するもんね。これ、けっこうがっつりした味のソースだね。僕、かなり好きそう。
レモン汁の酸味をはちみつで中和するから、ちょうどいい味になるんですよ。はちみつがなかったらお砂糖でもいいです。お砂糖だったら、はちみつより多めに。
はちみつのほうが甘いもんね。
揚げた鶏もも肉をお皿に盛り付けて、と。鶏もも肉1枚でこんなにできるんだ。まるでパーティーバーレルじゃん。
そう、1枚でたくさん食べられるから安上がりで経済的なんです。今、食材が値上がりしてますしね。ハニーレモンマヨソースを添えることで「おもてなし」感もでますし。
毎日料理してるとコストって大事だからね。安上がりなレシピを教えてくれるのは非常にありがたい。
パクチーを添えて完成!おいしそう!
ほんまに!さすがリュウジさん!
ボリューミーなザクザク感がくせになる!
じゃあ、いただきます。すでに飲んでるけど、あらためて乾杯!
乾杯!
……!うまい、めっちゃうまい!ザクザク感がすごいですね。ちょっと韓国風チキンっぽい。これは酒が進んじゃうな。
おいしいですね~。
家でここまでザクザクに作れるレシピってなかなかないですよ。あそこまでがっつり粉を使うとこんな食感になるんだ。
そう、小麦粉と片栗粉を2段階に分けてつけることによってこのザクザク感が出るんです。片栗粉か小麦粉、どちらか一方だけだとこの食感にはならなくて。多少冷めても、このザクザク感は残りますよ。
下味にレモンが大さじ1入ってるから、ほのかな酸味が残ってさっぱりいただけますね。
材料の代用はOK?二人の考え方の違い
このソース、にんにくを入れてもパンチがきいておいしくなると思う。
ちょっとだけ入れてみようか。
リュウジさん、チューブのにんにくはあまり使わないですよね。
そう。チューブにんにくと生にんにくは別物だって思ってる。
私も別物やと思う。生にんにくを使っているレシピに「チューブでもいいですか?」ってよく聞かれるけど…。
生にんにくを前提として作っているレシピと、チューブにんにくを前提として作っているレシピでは違いますよね。生にんにくを前提としてる場合、チューブにんにくでは代用できないんですよ。
わかります。ただ私は、「生にんにくがないから作るのやめよう」ってなるよりは、チューブで代用してでも作ってほしいと思ってしまう。だから、「チューブしかなかったらチューブでもいいですよ」って言うことが多いです。でも、パスタとかもつ鍋とか、にんにくが決め手の料理のときは「どうか生にんにくでお願いします…!」って言います。
ゆりさん、優しいね。俺は「代用できますか?」って言われたら「買え!」って言っちゃうもん。
そこがいいんですよ!観てる人も気持ちいい!(笑)しかもリュウジさんは、その分ちゃんとレシピを紹介してるんで、買っても使い切れるじゃないですか。
私が料理ブログを始めた頃は、「料理家」というと、テレビに出ている有名な、いわゆる料理の先生がほとんどで。そういう方たちにはかなわないから、素人の私は読者さんの質問に答えることだったり代用に答えたりすることで、なんとかやってきたのもあります(笑)。
たしかに、昔はテレビに出ている料理家さんしかいなかったなぁ。その点、ゆりさんはブログから有名になったんですよね。「ネット発の料理研究家」の第一人者かも。
いやいや、私より先に料理ブログで有名になって活躍されてた方はたくさんいるので、ぜんぜん第一人者じゃないですよ。ただ、みなさん元からめちゃめちゃ料理上手なんです。だから、「不器用で料理があまり上手じゃないのに料理本を出した人」というくくりでは、もしかしたら私が初めてかもしれない。
それは、料理ができない人からすると勇気になるよね。
ありがとうございます。でも、リュウジさんは料理ができる人じゃないですか。「料理ができないから簡単なものを作る人」と「料理ができるけどあえて簡単なものを提案する人」では、できることに幅があるなとは思います。
「料理研究家あるある」で盛り上がる
ゆりさんってワンパンパスタのレシピあります?
一応あります。でも、ワンパンパスタって簡単そうで意外と難しいですよね。麺にもよる。1.4mmなのか1.6mmなのかでも変わってくるし…。
そう、パスタの種類によってぜんぜん違うから。
「早ゆでは違うねん!」とか(笑)。
わかる!(笑)早ゆでだとね、レシピ通りにいかないから。
あるあるですよね(笑)。
あるあると言えば、ゆりさんっていつも「レンジ500Wですか?600Wですか?」って聞かれてるよね。
はい。だからSNSの名前を「山本ゆり(syunkon レンジは600W)」にしてるんです。元はフォロワーさんからの提案で、半分冗談だったんですけど、わかりやすいなと思って(笑)。
やっぱり優しい。
料理研究家の本懐はレシピ本
ゆりさんの「syunkonカフェごはん」シリーズって、日本一売れてる料理本シリーズなんだよね。本に関しては、僕はゆりさんを越えられないと思う。たぶん、還暦すぎても届くかどうか。
そんなことない(笑)。でも、逆に言えば私は本だけですから。私自身はそんなに知られてもないし。
でも、料理研究家の本懐はやっぱりレシピ本なのよ。僕も活動の中心はYouTubeだけど、本も細々と出しつづけてる。毎回、レシピ本大賞は本気だからね。
私、レシピ本大賞もらったことないです。
え、本当!?日本一売れてるのに!?
リュウジさん、本を出すペースが早くてびっくりします。
1日3~4レシピ作るんですよ。だから本にしないのももったいないかなと思って。
すごすぎます。リュウジさんって、本のスタイルは出版社にお任せするタイプですか?
任せる部分もあるし、こだわる部分もあるし。ゆりさんの本は、ゆりさんのこだわりが表れてる。かなり「こうしたい」っていうのがある人なんだろうな、って。
こうしたい、はありますね。テーマとか章立てとか、どの章にどのレシピを入れるかとか、どのページにどんな内容を載せるかとかも、まずは私が考えます。
マジで!?
はい。文章も基本的に全部、この本の特徴とか使い方ページも一字一句私が書いてます。
ゆりさん、そこまでやってるのね。さすが。
でも、ライターさんがほんと天才なんです。いないと何もできない。本の進行、間違いの修正、デザイナーさんとの橋渡し…何もかも頼り切ってます。編集さんもデザイナーさんもすごい方しかいなくて、私はむしろ迷惑ばっかりかけてます。ただほんとレシピ本に関しては、思い入れがすごくて。昔からレシピ本が大好きで、レシピ本を作りたくてこの仕事を始めたので…。
それは伝わってくる。本ってやっぱり、こだわってる人が勝つよね。僕も最近だと『虚無レシピ』(サンクチュアリ出版)はかなりこだわって作りました。でも、ゆりさん見習ってもっとがんばらなきゃな。
「リュウジのレシピトレード」書籍化決定!
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後編に続く