樋口直哉さんに教わる、最高においしい卵の食べ方
料理研究家の樋口直哉さんに教わる、「いつもの食材を最高においしく食べる」企画も第7回目です。今回のテーマは卵。毎日のように口にする食材ですが、樋口さんは一体どんな調理法を選ぶでしょうか?
今回の食材:卵
卵に関するポイント
卵料理をおいしくするには二つのポイントがあります。
1. 酸味を添える
卵黄は脂肪を含みコクが豊か。そのままでもおいしいですが、酸味と一緒に食べるとすっきりと食べられておいしさが格段にアップします。オムレツのケチャップ、ウフマヨのマヨネーズなどが「卵×酸味」の代表例ですね。今回は赤ワインを使って酸味を表現し、卵と相性のいいきのこを添えます。
2. うま味のあるものを加える
卵は味わいと香りに富む食材ですが、うま味物質は少なめ。「目玉焼き×醤油」はみなさんもよくやられると思いますが、酸味とうま味を兼ね備える醤油は実に合理的なパートナーなんです。今回のレシピではマッシュルームとベーコンがうま味をプラスする役割を担います。
卵料理のおいしさに関して、僕は「黄身のトロッとした感じをどう活かすか」がポイントだと思っています。
いろいろ悩んだ結果、スクランブルエッグを選びました。湯せんにかけるひと手間で最高の食感に仕上げます。卵自体はスーパーで買える一般的なものでOK、殻の色もお好みのもので構いません。
さあ、それでは作っていきましょう。
フランス風スクランブルエッグ きのこの赤ワイン煮添え
材料(2人分)
作り方
- 1. マッシュルームは薄切りにし、ベーコンは2~3㎜幅に切る。
樋口さんポイント
うま味担当のマッシュルームはフランスではよく使われる食材の一つ。食感を残したいのであまり薄切りにはしないこと。軸はうま味物質が少なめですが、もったいないので捨てずに刻んでください。ブラウンマッシュルームでもOK、より風味が豊かになります。
- 2. 鍋にバターを入れて中火にかけ、泡立ってきたらマッシュルーム、ベーコン、小麦粉を入れて弱火にし、2~3分炒める。
- 3. 鍋に醤油、赤ワイン、はちみつを加えてとろみがつくまで煮詰め、火を止める。
樋口さんポイント
赤ワインは酸味を加える役割で、カベルネやシラー系が適しています。ボトルの形が「なで形」ではなく「いかり形」のものを選んで。
赤ワインのタンニンが卵のたんぱく質と結びつくことで料理にコクを生む働きもあります。醤油はフォンドヴォー(フランス料理で用いられる出汁の一種)の代わり、コク要員その2です。はちみつでワインの酸味とのバランスをとることで全体がまろやかになります。加熱するうち鍋肌が焦げてきますが、そこが風味になるので、ヘラで落としつつ煮てください。軽いとろみがつき、ヘラで底をかいて一瞬でも線が出来れば頃合いです。
- 4. ボウルに卵を割り入れ、泡立て器で白身を切るように混ぜる。牛乳と塩を加えてさらに混ぜる。鍋に湯を沸かしておく。
樋口さんポイント
- 5. 煮立った鍋にボウルをのせ、湯せんにかける。端から固まってくるので混ぜながらゆっくりと熱を通し、好みの状態になるまで加熱しつつ混ぜる。
樋口さんポイント
- 6. 器にスクランブルエッグを盛りつけ、3を添え、パセリをふる。
樋口さんおすすめ調理道具
泡立て器
僕はOXO社のものを使っています。ステンレスワイヤーの長さが不均一なのが大事で、これによって混ざりやすくなるんですね。ホワイトソースやマヨネーズを作るときによく使いますが、おすすめは味噌汁。泡立て器に味噌を取って鍋に入れて混ぜると溶けやすくて便利ですよ!
日頃何気なく食べている卵料理の味の構成とその理由が明確に分かって、今回も「納得!」がいっぱい。「きのこと卵料理の相性はすごくいい」ので、マッシュルームとの組み合わせを思いつかれたとのこと。まいたけやしめじもおすすめだそうです。手間に見合うだけのおいしさ、ぜひお試しください。