ふたりが安心して「おいしいね」って食べられるチキン南蛮を
アイスムとnoteで「#私のイチオシレシピ」コンテストを開催しました。日常の中にある「食」を楽しむヒントになるようなエッセイを中心に、4名の受賞者を選ばせていただきました。
とってもおいしそうな料理のレシピはもちろん、誰が誰のために、そしてどんなシチュエーションで作るのか、その料理に込められた一人一人の物語をぜひ楽しんでください。
今回は、発酵食料理教室「ふんわり糀家」を主宰している笠原なつみさんのエッセイ「ふたりが安心して『おいしいね』って食べられるチキン南蛮を」です。鹿児島で食べたチキン南蛮をきっかけに、おうちでも本場の味を再現したいと、家族が安心して食べられるレシピを考案しました。小麦粉と砂糖を使わないチキン南蛮のレシピです。
本場の味はやっぱり「うわさ通り」だった
昨年の12月、家族で大分に温泉旅行にいったついでに、かねてから訪れてみたかった鹿児島へ行ってきました。どうしても訪れてみたかった場所があり、さらに、本場のチキン南蛮が食べたかったんです。
そこで食べたチキン南蛮は、うわさ通り絶品で、かなりボリュームがあったのですがペロリと食べてしまいました。
そこから「チキン南蛮熱」が燃え上がって、週1ペースで試行錯誤。本場のは、かなりたっぷりと砂糖が入っている味だったので、私流に砂糖不使用で、でもおいしくペロリといけて、胃もたれしない味のバランスを研究しました。
うわさ通り!?の絶品チキン南蛮の作り方
材料(2人分)
作り方
まずはタルタルソース作りから。
小鍋に水と卵を入れて火にかけ、沸騰してから約8分茹でます。
マヨネーズ、みじん切りにした玉ねぎ、醤油、レモン汁、にんにく、そして、細かく刻んだゆで卵を合わせてよく混ぜておきましょう。
玉ねぎの代わりにらっきょうを入れると、よりサッパリとなるので、暑い季節や疲れている時におすすめです。
あとは、大人だけが食べるなら、マスタードを足してもおいしいですよ。
次に南蛮酢を合わせます。
醤油、みりん、酢、そして辛いのがお好きな方はお好みの量の鷹の爪を加えます。私は「純米本みりん(杉浦味醂)」を使っています。甘みが強くて、砂糖なしでもコクが出ます。
南蛮酢は、そぼろの味付けに使ったり、焼いたアジを浸してもおいしいし、ピーマンやナスを焼き浸しにしてもいいので、普段から常備しておくと便利です。
鶏むね肉は、厚み2cmの削ぎ切りにし、まんべんなく塩こしょうをふって、米粉(小麦粉)を薄くはたいてから、卵液にくぐらせます。濃い味つけがお好きな方は、米粉(小麦粉)をしっかりはたくと、南蛮酢がしっかり絡みます。
フライパンに深さ5mmくらいの油を注ぎます。ここで火はつけないでください!
むね肉がパサパサにならないように、火をつける前に油の中にむね肉を入れてしまいます。170度で(油が冷たい状態から)3分揚げ焼きにします。
こうすることで、お肉にじわじわと熱が入って、ぷりっぷりに仕上がります。本場のチキン南蛮も、ものすごくぷりっぷりでした。
3分たったらひっくり返して、反対の面は1分揚げ焼きにします。赤みが見えなくなったらOKです。
取り出して置いておく間に、余熱でじわじわと火が通ります。
揚げ焼きに使ったフライパンの汚れをキッチンペーパーなどでサッと拭き取ります。
南蛮酢をいれて、一度沸騰させます。本みりんはアルコール13%なので、一度沸騰させることで、アルコールを飛ばします。
むね肉をいれて、表裏「サッと」返して南蛮酢を絡めてください。「サッと」がポイントで、ここで煮詰めて味を濃くすると、ちょっとくどくなってしまいます。
ちなみに、このくどいという言葉は私が住む香川県の方言では「むつごい」と言うんです。
はいっ、あとは盛り付けてできあがり。
工程が多いので、タルタルソースか南蛮酢(またはどちらも)を先に(前日に)作っておくといいです。どちらも他の料理にも使えるので、レシピの量より多めに蓄えておくのもアリ。
ふたりが安心して「おいしいね」って食べられるチキン南蛮を
本場で食べたあの砂糖たっぷりめの味付けは、止まらないおいしさでした。
その時は感動したのですが、砂糖なしでも「また食べたい」と思える味で、揚げ物+タルタルソースの一見ヘビーな組み合わせでも、大人がすんなり食べられて胃もたれしないバランスを追求したくなっちゃったのです。
わが家は、夫が小麦アレルギーなので、基本的に外でからあげは食べられません。(片栗粉や米粉ならOKなんですが、小麦粉を使っていることが多いですよね。)
私も外ではなるべく揚げ物を食べないようにしていて、そんな理由からもふたりが安心して「おいしいね」って食べられるチキン南蛮を作ることができたのがうれしかったです。
チキン南蛮は、面倒だけどアレンジ多様な楽しいレシピ
チキン南蛮は定番料理なので、作ってみたいなと思いつつも、揚げたりタルタルソースを作ったりと、なかなか面倒な部類の料理です。
チキン南蛮は、
・鶏肉を「もも」or「むね」のどっちにするか
・鶏肉を大きいまま揚げるか、ひとくち大に切って揚げるか
・南蛮酢の配合(後からかけるか、鶏肉をサッと煮て絡ませるか)
・タルタルソースの配合
・添え物の野菜のバランス
いろいろな要素が絡み合っていて、なにが正解というのは本当になく、自分が納得できる味を目指して何度も作っては「うーーーん…悪くはないけど、もう一息」の繰り返しでした。
チキン南蛮の構成要素についてちょっと詳しく解説
鶏肉を「もも」or「むね」のどっちにするか
わが家では、鶏肉は「むね」にしました。本場では「もも」を使っていましたが、タルタルソースのコクのバランスと「何度も食べたい」と思える味にしたくって「むね」がいい塩梅なのです。もも肉だったら、シンプルに唐揚げにして、レモンでも絞って食べたらおいしいかなと思ったり。
でも食べ盛りのお子さんや、重労働の方、食いしん坊の方には「もも」の方が喜ばれるかもしれません。
鶏肉を大きいまま揚げるか、ひとくち大に切って揚げるか
大きいままだと見た目も豪華でお店っぽく仕上がります。でも、一切れを一口で食べられない。
揚げ終わったものをまな板にのせて包丁で切ると、まな板がベトベトになってしまうし、お皿に盛り付けてからナイフで切ると、あんまり美しく切れない。
結果的に一口大に切ってから揚げるのが一番楽で食べやすくていいという結論になりました。
南蛮酢の配合(後からかけるか、鶏肉をサッと煮て絡ませるか)
醤油、酢、みりんを同量、プラス鷹の爪をお好みで。砂糖を入れない代わりに、みりんで甘みを出しました。暑い季節は酢を黒酢にしても良さそう。
私のレシピではフライパンに南蛮酢を入れて、沸騰させてからサッとむね肉を絡ませるやり方にしています。
タルタルソースの配合
タルタルソースの配合が一番悩みました。単体だとおいしいのに、鶏肉にかけて食べると味がぼやけたり、ソースがゆるいと口に運ぶまでの間に垂れてしまったり。
「鶏肉とタルタルソース」の良い塩梅を探ることが一番難しくて、楽しかったポイントでした。
また、使うマヨネーズによっても塩加減がちょっと違うので、ほんの少し醤油とレモン汁を入れることで味を引き締めてみました。玉ねぎの代わりにらっきょうを入れたり、玉ねぎときゅうりを入れたりしてもおいしいです。
それから、暑い季節には梅干しを叩いて入れてもおいしいです。大人が食べるならマスタードをプラスしてもいいですね。
添え物の野菜のバランス
お店で出てくるチキン南蛮の定番はキャベツの千切りだと思うんですが、せっかく家で作るならと添え物も色々試してみました。
とても良かったのが、レタスの千切りです。キャベツよりも色が鮮やか、カサが出てお皿にふわっと立体感が出るので、とても食卓が映えました。
また、季節ものですが、茹でた菜の花も色が鮮やかできれい。スナップえんどうもかわいいでしょう。
なにか赤みのある食材も欲しいところで、定番はトマトなのですが、偶然にも明太子が冷蔵庫にあったので添えてみたら、これが抜群に映える!(チキン南蛮も明太子も九州つながりという相性の良さ?)
おまけに、タルタルソースと明太子で味を変化させながら食べ進められるから、さらにおいしかったです。
あとは、酢漬けの玉ねぎ・カブ(ラディッシュ)・みょうが・新生姜もおいしいです。みょうがや新生姜は酢に漬けるだけでピンク色になりますし、赤たまねぎやピンクのカブでも写真のようにきれいなピンク色になります。
おうちで作る時って、こういう「お店では絶対に出てこない組み合わせ」ができるから楽しいんですよね。
ちょっと面倒……と最初は思うかもしれませんが、アレンジが多様でおいしくて楽しい「チキン南蛮」を、ぜひ作っていただけたらうれしいです。
笠原なつみさんのnoteはこちら
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