「至高のハヤシライス」を今井真実さんが作る

リュウジのレシピトレード #8 後編

2022.02.16

料理研究家リュウジさんとゲストがお互いのレシピをトレードし、料理をしながら語り合う本連載。今回のゲストは、”作った人が嬉しくなる「あたらしい家庭料理」”をモットーに活動する料理家の今井真実さん。アイスム × TOKYO FMのラジオ番組『鈴村健一のアイスム 週末ダイニング』の「3ステップレシピ」も担当しています。

そんな今井さんが選んだリュウジさんのレシピは「至高のハヤシライス」。まだ作ったことのないリュウジさんファンにもぜひ試してもらいたい!と今井さんは話します。

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至高のハヤシライス

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材料(4人分)

  • ⽜⾁薄切り…350g
  • ⽟ねぎ…小3個
  • マッシュルーム…1パック
  • にんにく…1⽚
  • バター…30g
  • 薄⼒粉…⼤さじ2と1/2
  • ケチャップ…⼤さじ6
  • ⾚ワイン…200mL
  • ウスターソース…⼤さじ3
  • ⽔…400mL
  • コンソメ…⼤さじ1
  • ⾁の下処理用
  • 塩こしょう …適量
  • 薄⼒粉…⼤さじ1
  • 玉ねぎを炒める用
  • 塩 …適量
  • お好みで
  • ⽣クリーム …適量
    (コーヒーフレッシュなどで代⽤可能)
  • 乾燥パセリ

作り⽅

1. ⽟ねぎを1センチくらいの輪切りにし、ほぐしておく。
2. マッシュルームは、⽯づきを切ってスライスする。
3. にんにくは⽪と底の部分と芯を取り除いておく。
4. ⽜⾁は適量の塩こしょうで下味をつけてから、薄⼒粉を馴染ませて下処理する。
5. フライパンにバターを熱し、溶けてきたら⽜⾁をほぐしながら⼊れ、強⽕で焼き⾊をつけていく。
6. 牛肉に焼き⾊がついたら、⼀旦取り出す。
7. 残った油で⽟ねぎを炒め、塩を加える
8. ⽟ねぎがあらかた炒まったら、マッシュルームを加え炒める。
9. 薄⼒粉を加え、中⽕でよく炒める。
10. ケチャップを加え、酸味を⾶ばすためにケチャップの⽔気がなくなりトロトロになるまでよく炒める。
11. ケチャップの⽔気がなくなってきたら⾚ワインを加え、アルコールを⾶ばしながら強⽕で数分煮る(3分程)。
12. ある程度酸味が⾶んできたら、先ほど⽕を通した牛肉を戻す。
13. ⽔とコンソメ、おろしたにんにく、ウスターソースを加え、強⽕で煮込む(15分程)。
14. とろみがついたら、盛り付けて完成。

玉ねぎは輪切りにしてほくっと感を出す

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今井

私、リュウジさんが大根の唐揚げをたくさん作っていた頃(2017年)からTwitterの投稿を拝見していました。一体何をされている方なのだろう、バーの店主の方なのかなとか思いながら。

リュウジ

当時は介護施設で働いていました。料理はイベントで作っていたものです。僕、おじいちゃんやおばあちゃんには人気でした。

今井

へえええ、でも当時の調理経験が今のお仕事に生かされてますね。

リュウジ

僕にはこっちの方が向いていたんです。

(材料を見ながら)あ、今日の玉ねぎは小さめなので、もう一個あった方がいいかもしれません。

今井

玉ねぎって個体差があるから、分量をどう表示するか難しいですよね。切り方は輪切りなんですね。

リュウジ

はい。ほくっとした感じにしたいんです。

今井

味出しと具材、両方を兼ねる感じなんですね。

リュウジ

この切り方、三國シェフの手法なんですよ。

今井

へー!

リュウジ

僕、料理人の方の手法から学ぶことが多いんです。

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たっぷりマッシュルームはうまみのため

今井

切り終わりました!次はマッシュルームでしょうか。たっぷりですね。

リュウジ

僕がマッシュルーム好きなんです。ごはんと食べる系のレシピは結構しっかりうまみをつけたいので、これくらいは入れちゃいます。

今井

切り方はどうしましょうか?

リュウジ

スライスしましょうか。でもこれは好みにもよりますよね。ごろっとしているのが好きな人もいれば、ずっと口に入っているのがいい人もいるだろうし……

今井

ずっと口に入ってる?

リュウジ

スプーンですくうたびに必ずマッシュルームがある、みたいな感じです。

今井

なるほど!

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リュウジ

僕はどちらかというと、うまみづけでマッシュルームを使うことが多いんです。グアニル酸が豊富に含まれているから。そこにトマトケチャップを入れると、グルタミン酸が加わるので……

今井

うまみたっぷりで、ごはんがすすむ!

リュウジ

そう、かなりうまみをつけた方が、初めて食べる人にはわかりやすいから、外食のような味付けにしちゃうんです。でも、それだけだと飽きるから、もっとやさしい、素材の味を大切にした料理があってもいいと思うんですよね。

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にんにくは煮込むタイミングで入れるのが肝

今井

にんにくの芽をとるのは癖ですか?

リュウジ

味に影響があるから取るというのもあるんですが、癖ですね。イタリアンの店で教えこまれたから、身に染み付いちゃっていて。

今井

私も取ります。にんにくは薄切りですか?

リュウジ

薄切り……あ、ちがうな。にんにくは、おろすんだった。

今井

じゃあ刻みましょ!切り始めちゃったので。

リュウジ

はい!……そうかおろしてたんだ、僕。すみません。結構細かめに刻んだ方がいいかもしれない。僕、カレーとかも、最後におろしを入れるっていう手法をやるんです。炒めないで、煮込む時に入れるんです。

今井

おもしろい!後出しでパンチをつけるんですね。

リュウジ

途中から入れるのと最初から入れるのとだと、香りの付き方がぜんぜん違うんです。炒めてから煮ると、香ばしさだけが残って、香りが薄くなってしまう。僕は香りをきかせたい派なんです。

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牛肉には小麦粉をまぶして保水させる

今井

私、出身が神戸で、牛肉が大好きなんです。

リュウジ

神戸は肉じゃがにも牛肉を使うんですよね。あと、豚肉を使ったうどんのことは「肉うどん」とは呼ばない。

今井

そうです。そうです。

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リュウジ

ハヤシライスに使う牛肉はバラ肉が一番いいと思います。適当な大きさに分けて、塩こしょうと薄力粉をまぶします。薄力粉をまぶすことによって、お肉に水分をもたせるんです。

今井

保水させる!こういうふうに、教えてもらいながらやるのって初めてです。

リュウジ

発見がありますよね。こんなやり方があるんだ!みたいなのがたくさん。

下ごしらえが終わったら、火をつけます。まずはバターを入れて牛肉を炒めてください。炒めて一度取り出す感じです。この感じだと、強火にしてもいいかもしれません。

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リュウジ

ここでは、外側に香ばしさをつけるのが一番のポイントなので、中まで完全に火が通らなくても大丈夫です。

今井

はい!

リュウジ

次は玉ねぎですね。ばらばらにしながら入れていきます。

今井

こんな感じですかね。

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リュウジ

いいですね。よく「飴色になるまで炒める」って言うと思うんですけど、これはあえてそうはしないんです。ほくっと感を出したいので。軽く焦げ目がついたら、お塩をちょっと入れましょうか。

今井

もうこれだけでいいにおい。

リュウジ

次にマッシュルームを入れるんですが、そんなに炒めなくても平気です。薄力粉を入れて、一緒に炒めていく感じですね。

今井

粉を焼く感じですか?

リュウジ

そうです!

「このレシピを作った頃の僕は、『酸味を許さない』人間だった」

今井

もうハヤシライスの匂いがしますね。今日ここに来るまでは私、すごく緊張してたんですけど、今めっちゃ楽しいです。

リュウジ

緊張してたんですか?

今井

してましたよー。留守をお願いした母親にはリュウジさんのアシスタントをしに行くんだと思われていて。「お手伝いがんばってね」ってお見送りされました(笑)。

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リュウジ

違うのに(笑)。

玉ねぎ、マッシュルーム、小麦粉が馴染んできたら、ここでケチャップを入れて、がっつり炒めちゃいます。

今井

ケチャップにも火を通すんですね。

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リュウジ

火を通すことで酸味を抜くんです。今、酢の刺激が気体になってふわっと香りがきているじゃないですか。それが弱くなるまでしっかり炒めます。ここが肝。火は強火で大丈夫です。

今井

目にもきますね!

リュウジ

ケチャップはそのままだとすっぱいので、オムライスやナポリタンをやるときにも、火を通してお酢をがっと飛ばしています。そうすると、甘みと旨味だけ残って、トマトペーストを使ったような味になるんです。トマトペーストがある場合は、トマトペーストを使っちゃった方がラクなんですが、あまり一般的ではないと思って。……買わないですよね、みなさん。

スタッフ

買わないです……。

今井

(鍋の様子を伺いながら)こんなにしっかり炒めているのに、玉ねぎが煮崩れてませんね。あの大きさで切っていた意味がわかりました。

リュウジ

でも、結構とろっともするんです。その上で、少しほろっと感が残るんです。

今井

めっちゃ楽しみ(がんがん煮込む)!

リュウジ

ケチャップが落ち着いたら、次は赤ワインを入れて、赤ワインの酸味も飛ばしちゃいます。このレシピを作った頃の僕は、酸味を許さない人間だったので、徹底的に飛ばしちゃうんですよね。火は結構強くて大丈夫です。ワインを入れると、まわりの焦付きがぜんぶ剥がれると思います。

今井

酸味を許さない(笑)。わっ、すごい。アルコールがどばっと飛んできます。これでだいぶハヤシソースっぽくなりました。とろみもあるし。チョコレートみたいないいにおい!

リュウジ

これで2、3分煮ると、さらにとろみのあるソースっぽくなっていきます。マッシュルームがソースと一体化するんですよね。結構どろっとしてきます。

今井

黒っぽいですよ。すごく。高級感のあるハヤシライスの色!

リュウジ

そしたらお肉をもどしてお水を入れます。この鍋で作る場合、お水は350mLくらいでいいかもしれないですね。YouTubeの動画はフライパンでやっていて、水分が蒸発しやすかったので400mL使っているんですが。様子を見ながらやりましょう。

今井

わかりました〜。

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凝っているけど、身近な材料だけで作れる

リュウジ

ウスターソースとコンソメも入れちゃいます。コンソメを使わなくても旨味十分かもしれないのですが、僕は濃い味派なんで、入れます。

今井

ウスター!

リュウジ

ウスターのなかには複数のスパイスが含まれているので、入れるだけで複雑な味がでるんです。今回はデミグラスソースを使っていないので、ここまでやって、やっとデミっぽさが出てくる感じです。あとはにんにくを入れて、強火で10分から15分。煮込むといい感じにほろっとなるので。たまに混ぜながら、煮ていきます。

今井

全然難しいことはないのに、めっちゃ凝っている感じがしますね。ひるまないことが大事そう。煮込み料理って難しいイメージがあるけど、フライパンでもできるし。しかもこれだったら、おうちにある調味料でできますよね。

リュウジ

できますね。バルサミコも使わないですし。

今井

でも、本当は使いたいんじゃないですか?バルサミコ。

リュウジ

使いたいです。バルサミコの酸味をがんがん飛ばしてとろみをつけたい!僕、牛肉に添えるソースはバルサミコが一番うまいと思っているんです。煮詰めると糸を引くような感じになるから見た目もかっこいいじゃないですか。だけど、汎用性を考えてつい醤油と酒とみりんに逃げちゃう。

今井

意外と、醤油酒みりんを煮詰めるよりもバルサミコを煮詰めた方が簡単だったりしますよね。

リュウジ

簡単です。しかもバルサミコはスーパーにも売っている。でもね、ほかに何に使えるの?と聞かれると……。僕がどこまでバルサミコを活用できるレシピを作れるかっていうと悩んでしまうんです。

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今井

(鍋を見て)いい感じですね。

リュウジ

この煮詰まり具合だったら煮込み時間は10分でいいかもしれません。味見して、塩気のバランスがOKであればこれで完成です。

今井

はい!味見してみます。……すごいとろとろ!何が入ってるかわからない複雑な味。結構大人向けの味です。最後にマッシュルームの香りがフワッときます。

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「料理をしているうちに好き嫌いを克服できた」

リュウジ

照りがいいですね。これはかなり良い出来だと思います。玉ねぎの感じが、僕が作ったものよりもいい感じ。かなり太めに切ってもらったので、存在感がある感じになりました。フレッシュさが残っておいしい。

今井

いただきま〜す!うん、うんうん!すごくおいしい!甘いですね。ざくざく感があってめっちゃ香ばしい。この香ばしさが肝な感じがします。

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リュウジ

いつもはフライパンで作っていたんですが、鍋で作るのでもおいしいですね。

今井

あんなに入れたケチャップが、入っている感じがしない。

リュウジ

煮込み時間を普段より少なめにしたので、酸味が少し残ってますけど、これはこれでおいしいです。昔よりは大丈夫になったんです、酸味。

このレシピは3、4年前に作ったものなんですが、そのころは僕、お酢を使った料理のレパートリーがほぼなかったんですよ。でも、研究を進めるうちに、料理研究家たるもの、酢を使わなくてはだめだなと思って。いろいろ酢を使ったレシピを試していくうちに、大丈夫になってきたんです。

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今井

私はお酢、大好きです。逆に、最後にお酢を入れたくなっちゃうんですよ。前編で作った蒸しブリもそうなんですが……あ、大丈夫でしたか?

リュウジ

大丈夫です!自分で料理を作っていると、好き嫌いがなくなっていくような気がしているんです。食べられる方法を探そうとするんですよね。なので、僕は好き嫌いを克服したい方は、料理をするのがいいんじゃないかと思っています。って言ってもいまだに梅干しは食えないんですけど……。今井さんは食べられないものってありますか?

今井

今はないですね。昔は野菜が苦手だったんですけど、克服しました。夫の実家が農家なので、たくさん野菜をいただくんです。それでいろいろ調理法を考えて、おいしく食べる方法を見つけていった感じです。

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ほうっておけるのがオーブンの魅力

リュウジ

まだ完全に一般化していない食材や調味料で、目をつけているものありますか?

今井

ラム肉ですね。以前に比べると需要は増えましたが、もっと増やしたいです。今、スーパーにラム肉が陳列されているうちに買っとかへんと、取り扱いがなくなるんじゃないかなと思っていて……

リュウジ

ラム肉、僕も大好きです!レストランにあったらぜったい食う。クミンで食べるのが大好きです。まじで。

今井

おいしいですよね。

リュウジ

僕は低温調理器をもっと広めたいです。今、国産のものもどんどん増えていて。あれを使えば、ピンク色のチャーシューも作れるようになるし……

今井

私は低温調理器に憧れて、オーブンで低温調理をするようになりました。100度で90分かけてじっくりお肉を焼いています。

リュウジ

そうなんですね!僕もスペアリブは、120度位でずーっと焼き続けます。

今井

めっちゃやわらかくなりますよね!

リュウジ

はい。でも、レシピではあんまり使っていないんです。普段はめっちゃ使うんですけどね。食材をスキレットとかに入れて、しばらくほっとくだけでおいしく仕上がるじゃないですか。でも、いかんせんオーブンは、使い出すまでのハードルが高い気がして。尻込みしちゃってるところがありますね。

今井

私はオーブンに食材を仕込んで、他の用事を済ませる間にじっくり焼いておいてもらう……というのをよくやります。

リュウジ

作っている間にほかのことができるのっていいですよね。

今井

そうなんです。生肉も、買ってきたらそのまま、味付けせずに放り込んで素焼きしています。そうすれば、冷蔵庫で数日保存できるので。味はあとで食べる時につけるんです。

リュウジ

めずらしい調理法ですね!あんまり聞いたことがない。

今井

リュウジさんのオーブンレシピも見てみたいです。「リュウジのオーブン革命」。

リュウジ

やっていきたい気持ちもなくはないんですけど………オーブンかーーーーー。

オーブンを使うレシピや、うまみ調味料を使わないレシピを見たいっていう意見をいただくことは確かにあるんです。うまみ調味料もね、昔は、あれを使ったら「負け」だと思っていたこともあるから、やろうと思えばできるんだけど……。一体どれだけの人が見てくれるんだろう。

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今井

えっ、めっちゃ見ますよ!リュウジさんがうまみ調味料を使わないで作る料理のレシピ、うまみをどうやって補填するんだろうって、もうそれだけで興味津々です。

前編はこちら

リュウジ

「今日食べたいものを今日作る」をモットーに、忙しい現代人の救世主になるべく時短、簡単レシピを公開し続ける料理研究家。株式会社バズレシピ代表取締役。著書に『やみつきバズレシピ』(第5回・第6回レシピ本大賞連続入選)、『ひと口で人間をダメにするウマさ! リュウジ式 悪魔のレシピ』(第7回レシピ本大賞受賞)、『リュウジ式至高のレシピ 人生でいちばん美味しい! 基本の料理100』など。

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取材・文:ネッシーあやこ
撮影:村上未知

がんばる日も、がんばらない日も、あなたらしく。

がんばったことやがんばらないと決めたこと、
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