「世界⼀⻑ねぎを美味しく⾷べる鍋 」を休日課長さんが作る
料理研究家リュウジさんとゲストがお互いのレシピをトレードし、料理をしながら語り合う本連載。今回のゲストは、ゲスの極み乙女、DADARAY、ichikoro、礼賛の四つのバンドで活躍するベーシストの休日課長さんです。
プライベートでもリュウジさんと飲み仲間だという休日課長さん。そんな休日課長さんが選んだリュウジさんのレシピは、「世界⼀⻑ねぎを美味しく⾷べる鍋」。太く切った長ねぎを立てて断面を見せる、見た目にも楽しいお鍋です。
前編に引き続き、同い年の二人による「こういうシチュエーションで食べたい!」という妄想トークが満載。ワイワイ楽しいお鍋回、後編です。
世界⼀⻑ねぎを美味しく⾷べる鍋
材料(2人分)
作り⽅
- 1. ねぎの葉の部分についている砂を洗い流す。
- 2. ねぎは鍋の⾼さほどの⻑さに切り、豚⾁は3等分に切る。
- 3. ⼟鍋の中⼼にねぎを⽴て、周りに豚⾁を⼊れる。
- 4. かつお節を電⼦レンジ600Wで40〜50秒あたため、指で揉んで粉にする。
- 5. 鍋に⽔、酒、粉にしたかつお節、味の素、塩、ごま油を⼊れる。
- 6. 鍋を⽕にかけ、沸いたらふたをして弱めの中⽕で20分煮込む。
あの魯山人からインスピレーションを得たレシピ
このレシピ、ねぎを立てるんですね。この発想はなかなか浮かばないですよ。
北大路魯山人のすき焼きは、こうやってねぎを立てていたんです。そこからインスピレーションを得て作ったのがこのねぎ鍋。
魯山人から来てるんだ。それはすごい。僕なら絶対にたどり着かないもん。リュウジさん、いろんなところにアンテナを張ってるんですね。
アンテナ張らないとネタが尽きるんですよ。今、週7でレシピ動画更新してるから。
どういうスケジュールで撮ってるんですか?
2日で8本くらい撮ります。それ以外の時間は料理の研究をして、こういう別の仕事もやって。
それは大変だ。
新感覚!ねぎが「ホクホク」になる
ねぎを洗って、鍋の高さくらいに切ります。4㎝くらいですかね。青い部分も等間隔に切っちゃってください。
太くておいしそうなねぎだなぁ。
この鍋はねぎをまるまる食べるのがポイントなんですよ。ねぎがね、ホクホクになる。
僕、まだホクホクのねぎを知らないです。
切ったねぎはもう鍋に入れちゃいましょう。鍋の真ん中あたりに立てて並べるだけ。
豚バラは3等分してください。
豚バラ、見るだけでテンション上がる。
いや、まだ生だから(笑)。
肉同士がくっついても剥がせばいいだけだから、ぎゅうぎゅうに入れても大丈夫。
なんだこれ、はじめての感覚だ。なんか楽しい。
こうすると、豚バラから出た脂がねぎに吸収されるんですよ。沸騰すると、ねぎの真ん中の空洞から汁が上がってくるんです。
使用する鍋は土鍋がいいんですか?
なければ他の鍋やフライパンでもできるけど、土鍋は熱がこもるからいい温度で蒸すことができますね。できれば小さめの土鍋がいいです。鍋の高さに合わせてねぎを切るから、鍋がでかくなればなるほど、ねぎがでかくなっちゃう。
粉々にしたかつお節を使うのがポイント!
かつお節を電子レンジで40秒くらい温めます。温めたあと、指で粉々にして鍋にそのまま入れるんです。
これは、なんでレンチンするんですか?
熱が加わることによって水分が抜けて、粉々にしやすくなるから。
なるほど。
かつお節で出汁を取るときはかつお節を濾すけど、こうして粉々にすると、濾さずにそのまま入れても口に残らないんです。
かつお粉とか、すでに粉になっているものもありますよね。
あるけど、粉になっていないかつお節のほうが品質が良いものが多いから、僕はこっちを使います。
なるほど。レンチンするとかつお節の香りが立ちますね。いい香り。
全部セットしてから火にかけるので、焦らなくても大丈夫
では、水と調味料を入れていきます。
鍋を火にかけますか?
いや、全部の調味料を入れてからで大丈夫。
全部セットできてからでいいんですね。焦らないからいいな。
味の素は昆布の旨味と同じグルタミン酸だから、かつお節との合わせ出汁になります。最後に香りづけとしてごま油を回しかけて。
味付けは出汁と塩だけなんですね。シンプルイズベストだ。
煮るというより、ふたをして少量の水で蒸していく感じ。だからねぎの風味が逃げないし、むしろ、出汁を吸い込んでおいしくなっていくんです。
この発想はなかったわ…!
ねぎが出汁を吸い上げる!
煮込んでる間に、つけだれのレモン醤油を作ります。ポン酢でもいいけど、レモン醤油で食べるとさっぱりしてめちゃくちゃおいしいの。
このレモンは小さいから半分くらい絞っちゃってもいいかも。
生レモンがおすすめだけど、調味料のレモン果汁でも大丈夫。
そうこうしてる間に、めちゃくちゃおいしい匂いがしてきましたね。お腹減った。
沸いてきましたね。ねぎが出汁を吸い上げてる。
ほんとだ、ねぎの断面がコポコポしてる。
ねぎってふつうは薬味として使われるじゃないですか。でもこうするとホクホクになって、ねぎが主役になるんですよ。
リュウジさんのレシピって、味はもちろん、見た目もいいですよね。インパクトがあって。
実は、この鍋は見栄えから逆算して考えたんです。ねぎの断面を見せるにはどういうレシピにしたらいいか考えました。
そういう考え方もあるんだ!
僕は料理の名前から入ることもあります。たとえば「悪魔のチャーハン」だったら、名前を先に思いついて、そこから悪魔的な魅力の味を考える。
新しいレシピを考えるときって、部屋で一人で飲みながら考えるんですか?
僕、一人でいるときは一滴も酒を飲まないんですよ。コミュニケーションツールだから、人といるときしか飲まない。
意外だ!
だから、真の酒飲みではないのかも。やばいな、キャラがブレる。
「今までの人生で、ねぎをこんなに楽しんだことあったかな…」
うまそう!これはぜひ、ねぎ農家さんに見ていただきたいですね。
これ、食べ方があるんですよ。まず、ねぎを取ったら箸で縦に切って、開くんです。
開いたねぎで豚バラを巻いて、レモン醤油をつけて食べます。
どれどれ…。
うまい!!
でしょう?
驚きました。これはやばい。ねぎの中まで火が通ってて、繊維感がまったくない。本当にホックホク。豚バラとかつおの風味との相性も最高!今までの人生で、ねぎをこんなに楽しんだことあったかな…。
ねぎって斜め切りで鍋に入れると、しなっとするじゃないですか。だけどこの鍋は口に含むねぎの量が段違いなんで、「ねぎ食ってる感」がすごいんですよ。
「ねぎ食ってる感」はすごいけど、スッと溶けてくから不思議と口に残らないですよね。こんなにねぎが主役の鍋はないですよ。しょうがとにんにくさえ入れない潔さ。
ありがとうございます。このレシピ気に入ってるんだけど、YouTubeではそんなに再生回数が伸びなかったから、課長が選んでくれたのがすごく嬉しかった。
僕の鍋もねぎの使い方がポイントだったので、いい対比になりましたね。
ねぎの使い方が対照的ですよね。みじん切りにしてスープに溶け込ませた課長と、ねぎを主役にした僕と。
いや、この鍋を知っちゃったら絶対にねぎを立てたくなる!
〆の雑炊は絶対!雑炊をおかずに白ごはんを食べることも
この鍋は着物の女将さんがいらっしゃるような店で出てもおかしくない。「外、寒いですね」って言いながらこのお鍋を出してほしい。
これは日本酒ですね。焼酎もいけるけど。
〆は雑炊ですね。卵は溶いてもいいですか?
溶きましょう。ねぎの旨味が溶け込んだ汁に、軽く水で洗ってさらっとさせたごはんを入れて、卵で閉じて。
想像しただけでうまい。ねぎの名産地の名物になりそう。リュウジさんがその土地の名産品で料理したらおもしろそうですね。
でも、土地の名産品を使う料理って難しいんですよ。野菜自体の味がすごく強いから。
この鍋でいろんな産地のねぎを食べ比べてみたいな~。
食べる手が止まらない。この鍋でダイエットできそう。
どうだろう、豚バラだからね。脂は汁に溶けてるけど、そのぶん雑炊はカロリー高いと思うよ。
あぁ、これで雑炊をしないのは無理かな。白ごはんと一緒に食べつつ、さらに〆の雑炊も食べちゃう。
鍋のときって、白ごはんも一緒に食べる?
普通ですよね?
僕は、鍋のときは鍋だけですね。
僕、絶対に白ごはんで鍋を食べて、最後の〆は麺か雑炊。下手すると、雑炊をおかずに白ごはんを食べることもあります。
それはたぶん一般的ではない。
食べちゃうんだよなぁ。
課長ってすごくおいしそうに食べるよね。「休日課長の妄想グルメチャンネル」とかあったら、ずっと見てられると思う。
ねぎ鍋を出されて告白…!?ドキドキの妄想トーク
このお鍋はどんなシチュエーションで食べたいですか?
…ちょっと待ってください、考えます。
めちゃくちゃ真剣に考えるじゃん。
…整いました。全部架空なんですけど、ツアーの打ち上げでよく行く地方の居酒屋があって、大将とも気心知れていて。そのお店に看板娘がいるんですよ。名前は…早苗さんにしようかな。で、久々にそのお店に行ったら、大将が「今日は早苗が手料理を振る舞いますよ」って言って、緊張した面持ちの早苗がこのお鍋を持ってきます。
ふむ。
僕が食べようとしたら、早苗が「あ、食べ方があるんです」って、ねぎを開いて豚バラを巻く食べ方を教えてくれて。気づいたら、大将がいなくなっていて早苗と二人きりなんですよ。そしたら頬を赤らめた早苗が「私、どうしても課長さんにこのお鍋を食べてほしくて…。ずっと好きだったんです」って言うんです。
看板娘とどうにかなる話じゃないですか。もっとねぎ鍋出してよ(笑)。
これは失礼。
いや、めっちゃおもしろいです。
早苗も、リュウジさんのYouTubeでこのレシピを知ったそうですよ。
早苗さん、バズレシピの視聴者なんだ。そこは早苗のオリジナルであれよ!(笑)
リュウジさんは?どういうシチュエーションで食べたいですか?
課長のあとに言うの嫌だよ。
まあまあ、そう言わず。
えーと、昼間に外でデートして、夕方になって「夕飯どうする?」って話になって。僕が「農家さんからいいねぎもらったんだけど、ねぎ鍋作ろうか?」って言ったら、目を輝かせて「食べたい!」って言ってくれる女性で。
いいですね。
二人で僕の家に来て、僕がちゃちゃっと作って。彼女はビールを飲んで待ってるんですけど、1缶飲み終えた頃に「はい、できたよ」ってパカっとふたを開ける。食べ方を教えたら、「こんな食べ方知らない!」って感激してくれて。「俺に惚れ直した?」みたいな。
設定としては、まだ付き合ってない段階?
いや、付き合ってなくて家に呼ぶのはハードル高いから、付き合って2ヶ月後くらい。告白するときの勝負レシピではないかな。ほっこりレシピだから。
彼氏の家でこの鍋が出てきたら「ワンランク上の男だ」って思っちゃいますよね。惚れ直します!
お二人はコラボの予定はないんですか?
あるとしたら料理系なんだけど、本音言うと、課長に演奏してもらって歌ってみたい。めちゃくちゃ贅沢ですけど。夢ですね。
リュウジさんの「歌ってみた」、バズりそう。
俺、もともとは音楽やりたかったんですよ。声優か歌手か、声を使う仕事をしたかったんです。だから音楽には憧れがある。
だからリュウジさん、音楽関係の人と仲がいいんですね。
不思議と、ミュージシャンと話が合うんですよね。利害関係なく付き合えるからかな。ミュージシャンの人達は、僕と関わってもメリットがないから。
仕事ありきで絡んでるわけじゃないですもんね。
そうそう。じゃあなんで一緒にいるかといえば、単純に楽しいから。課長と会うのも、純粋に一緒にいて楽しいからです。飲むとだいたいさっきみたいな妄想の話になるんだけど、それを聞くのが好き。課長ワールドに巻き込まれながら飲むのが最高なんですよ。
リュウジさんとコラボするなら、僕の妄想を実写化したいですね。僕の妄想とリュウジさんのレシピを絡めたらおもしろそう。
飲むと絶対この話になるよね。
その実写化には、いろんな方言の女性に出てきていただきたい。「方言メシ」とかどうですかね?
ねぎの名産地の回は早苗さんが出てきて?
そうそう!
実現するなら僕も料理監修として参加したい。いやぁ、課長とこういう話するの、本当に楽しいです。