
リュウジさんの「やけくそジャンバラヤ」を長谷川あかりさんが作る
料理研究家リュウジさんとゲストがお互いのレシピをトレードし、料理をしながら語り合う本連載。今回のゲストはSNSを中心に話題沸騰中の料理研究家・長谷川あかりさんです。
前編では、長谷川あかりさんの「薬味たっぷり出汁カレー」をリュウジさんが作りました。後編は、リュウジさんのレシピ「やけくそジャンバラヤ」を長谷川さんが作ります。
料理はもちろんトークも大盛り上がり!リュウジさんからは「僕を倒してほしい」なんて発言も飛び出して…!?リュウジさんのYouTubeチャンネルでは動画版を見ることができますよ!
やけくそジャンバラヤ

材料(2人分)
作り⽅
- 1. 鶏もも肉に、塩、チリパウダー、黒こしょうをすり込む。
- 2. 玉ねぎ、ピーマン、ウインナーを一口サイズに切る。にんにくはスライスする。
- 3. フライパンにオリーブオイルを入れて熱し、鶏もも肉を両面こんがりと焼いたら取り出す。
- 4. フライパンに残った油で、にんにく、玉ねぎ、ピーマン、ウインナーを炒め、ケチャップを加えてさらに炒める。米とチリパウダーを加えてさらに炒める。
- 5. 水 480cc、鶏ガラスープの素を加える。沸騰したら3の鶏肉をのせ、ふたをして16分蒸す。
- 6. パセリと黒こしょう、チリパウダーをふりかけて完成!ハサミで鶏肉を切って混ぜる。


材料カットを撮影したあとにリュウジさんが「やっぱりウインナー入れるわ」と追加
急遽メニューを変更!その理由は…

今日ね、本当はペンネを作ってもらう予定だったんです。でも、せっかくトレードするならあかりさんが普段あまり作らないレシピの方がいいかなと思って。急遽メニューを変更して、フライパンひとつで作る「やけくそジャンバラヤ」にしました。

「やけくそジャンバラヤ」って響きがよすぎますよね!

「やけくそ」っていうほど材料は少なくないんですけどね。チリパウダーも使うし。

でも、メニュー名に「やけくそ」ってついていたら、作るハードルがグッと下がるから助かります。



乾杯!

こちらが材料なんですけど、あかりさんが普段あまり使わない調味料もあるかなと。

たしかに、鶏ガラスープの素もケチャップもめったに使わないかも…。

鶏もも肉入れるのに、さらに鶏ガラスープの素も入れますからね。かなりガツンとした味付けです。

私とは正反対ですよね。以前ネットで見たんですけど、「数日間、長谷川あかりのレシピでていねいに暮らしたあとで、2~3日リュウジさんのレシピで英気を養う…っていうのを繰り返してる」っていう方がいて(笑)。

主菜をあかりさんレシピにして、副菜をリュウジレシピにするとか、その反対とか、織り交ぜてもらうとちょうどいいかも。メリハリがあって飽きずに食べられるんじゃないかなぁ。

それいい!
下味をつけた時点ですでにいい香り!

鶏もも肉に、塩 2つまみ、チリパウダー 小さじ1、黒こしょうをすり込む

まずは鶏肉に下味をつけていきます。塩、チリパウダー、黒こしょうを両面に振りかけて、手ですり込んでください。


あかりさんって、スパイスは使いますか?

あまり使わないんですけど、使うレシピのときはもう土下座するような思いで「ぜひこのスパイスを買ってください」って書きます。

わかるわ。

「チリパウダーがない場合はどうしたらいいですか?」っていう質問には、どう答えますか?

まぁ、代替するとしたらカレー粉かな。でも、ジャンバラヤはチリパウダーの香りが命だからなぁ。

たしかに、すでにチリパウダーのいい香りがしてます。このまま片栗粉まぶして揚げてもおいしそう!
ピーマンは種ごと!手でちぎるのもアリ?

玉ねぎ、ピーマン、ウインナーを一口サイズに切る。にんにくはスライスする

細かいみじん切りじゃなくても大丈夫。1cmくらいのざく切りで。

そのおおらかさもいいですよね。レシピに「みじん切り」って書いてあると、少しハードル上がるから。


ピーマンの種はそのままで大丈夫です。ピーマンの種には栄養があるから、僕はそのまま入れちゃう。どうせ煮ちゃうから、ヘタも入れて大丈夫。

うれしい!手でちぎるのもアリですか?

アリです。

やけくそ感あっていいですね!


ウインナーは輪切りにします。ジャンバラヤは鶏もも肉がメインだから、本当はウインナーがなくてもいいんですけど、やっぱりあると華やかになると思って。

あるとジャンバラヤ感が出ますよね。旨味も追加されますし。
焼いた鶏肉が「この色」になったらもう勝ったようなもの

フライパンにオリーブオイル 大さじ1半を入れて熱し、鶏もも肉を両面こんがりと焼く


鶏肉って皮の食感が気になる方もいるので、皮から先に両面をしっかり焼いていきます。鶏肉から十分に油を出すのがポイント。まぁ、このあとお米と一緒に炊くので、必ずしもこの時点で完璧に火を通す必要はないんですけど。

こんがりしてきた。これ、眺めているだけで食欲が湧きますね!

焼きあがった鶏肉を取り出す

こんがりしたいい色。この色が出れば、もう勝ったようなもんです。

勝ち確ですね!

このフライパンには今、鶏油(チーユ)とオリーブオイルとスパイスが入ってる状態じゃないですか。正直、もう何を炒めてもおいしい状態です。

この香りだけで飲める!
たった16分で炊きあがるから、お米を炊き忘れた日にもおすすめ

フライパンに残った油で、にんにく、玉ねぎ、ピーマン、ウインナーを炒める

まぁ、このレシピはあくまで「やけくそジャンバラヤ」なんで、なかったらウインナーもピーマンも省いて大丈夫です。

あったほうが絶対にジャンバラヤっぽいですけどね。ピーマンの緑が彩りになるし。

ケチャップ 大さじ3半を加えてさらに炒める

けっこうケチャップたっぷりですね!

そう、トマトソースの代わりにケチャップを使ってるから。

米 1.5合を加える。チリパウダー 小さじ1/2を加えて炒める

ケチャップが全体に行き渡ったら、お米を加えてください。お米は洗わなくても大丈夫です。

お米も混ぜちゃっていいんですか?

混ぜて油を吸わせてあげてください。で、ここにチリパウダー 小さじ1/2を入れます。下味にも使ったんだけど、ここでさらにチリパウダーを足すことによって、ジャンバラヤ特有の異国情緒あふれる香りが表現されるんですよ。

小さじ1/2ってけっこう使いますね!

でしょ。だからチリパウダー1瓶買っても、4回くらいジャンバラヤ作ったら使い切れます。余らせる心配がないの。

水 480cc、鶏ガラスープの素 小さじ1を加える

全体が赤くなって油が回ったら、ちょっと平らにならしてもらって、水を480cc入れます。あと、鶏ガラスープの素を小さじ1杯入れて。お水を入れたら強火にしてください。そのうちポコポコ沸いてくるんで。

お湯が沸いたら鶏肉を加え、ふたをして16分蒸す

あ、沸騰してきましたね。じゃあ、さっき焼いた鶏肉をドカッとフライパンの真ん中にのせてください。油も入れちゃって。入れたら中火にして、ふたをして16分待つだけです。

すごく簡単だし、時間もかからないですよね。

でしょ。僕、お米を炊かなくても作れるレシピが好きなんですよ。冷凍ごはんを切らしちゃってる日でも、これだと16分で炊き上がるから。

炊飯器で炊いたら40~50分はかかりますもんね。でも、ここまで来てもまだ味の想像がついていません。鶏肉とかウインナーとか鶏ガラスープの素とか、いろんなうまみが重なってるから、どんな最終形態になるんだろう?
100年後も歴史に名を残す料理家になりたい


炊きあがるまでおしゃべりしますか。あかりさんって、料理家として目指すところはあるんですか?

料理って時代によって流れがあると思っていて。なので、100年後に教科書や文献に「令和の料理界に長谷川あかりという人がいました」と名前が残っていたらうれしいです。

それってかなりロマンがありますね!歴史に名を残すというと、小林カツ代さんや栗原はるみさんレベルですよね。

歴史に名を残す料理家さんの共通点について考えてみると、レシピを提供するだけじゃなくて、ライフスタイルそのものが確立されているんですよね。その先生の生活に憧れるファンが多いというか。

でも、あかりさん自身に憧れている人も多いと思いますよ。あかりさんって、レシピがバズるだけじゃなくて、「料理家を信じる」というムーブメントを生み出したじゃないですか。信じて作ってもらえるって、料理研究家の本懐だと思います。

私自身がすごくレシピに救われてきた人間なので。「私を救ってきたレシピをシェアしたい」っていう思いが強いんですよね。


16分経ったので、ふたをオープンします!

おお、おいしそう!

これはうまいわ。おこげができる音がパチパチ聴こえる。2分くらい、ふたを開けたまま強めの中火で焼きます。

味見をし、場合によっては塩で味を調整する

…おいしい。お酒に合わせるならもう少し塩味があってもいいかも。でも、かなり好きです。

意外と鶏ガラスープの素が控えめでしょ。本来の僕のレシピは、鶏ガラスープの素が小さじ1半なんです。だけど今回は小さじ1に変更しました。さっき「薬味たっぷり出汁カレー」を食べて、このくらいのほうがあかりさんの好みだろうと思って。

鶏ガラスープの素、控えめだけどいい仕事してますね。確実に旨味が底上げされています。


最後に彩りとして、パセリ・黒こしょう・チリパウダーを振りかけて完成です!

おいしそう~!見た目も楽しい!

鶏肉をキッチンばさみで食べやすい大きさに切る

鶏肉、火が通っていて柔らかい!こんなにホロホロなんだ~!

下のほうにおこげがあるんで、全体的に混ぜちゃってください。

これ、余ってる野菜とかなんでも受け止めてくれそうですね。

アスパラでも青菜でも、なんでもいけますよ。なんてったって「やけくそジャンバラヤ」なので!
スパークリングワインとキャンプが合いそう!



いただきます!

…わ、おいしいです!味が完成されていますね。味見したときは「もうちょっとお塩足してもいいかな」って思ったけど、鶏肉を切って混ぜたらちょうどいいです。なんかテーマパークに来た気分!鶏肉がとっても柔らかい。

さすがに16分も炊くとたんぱく質がほぐれて柔らかくなるんですよね。

具材の旨味もすごいけど、ケチャップの甘みが活きていて、チリパウダーの香りで異国情緒があふれている感じ。意外と辛くないの。

そう、見た目ほど辛くなくて、万人受けする味に落とし込めたと思っています。


リュウジさんの料理って、実はみんながイメージしているほど味が濃いわけじゃないんですよね。特に女性は「リュウジさんのレシピって味が濃いんじゃ…」って敬遠している方もいると思うんですけど、これは本当にちょうどいい塩梅です。

まぁ、今回は相手があかりさんということで若干の調整をしましたけどね。

そう、リュウジさんのレシピって調整できる余白があるんですよね。


実はあかりさんに試していただきたいものがあって。僕が作った『マジスコ』というタバスコなんですけど。これ、ちょっとサルサソースっぽくて。

あ、うれしい。味変してみたいです。(ジャンバラヤにかける)わぁ、辛くておいしい!!スパークリングワインが合いそう!キャンプとか行ったことないけど、これはキャンプで食べたいかも!

これ、キャンプで食ったら飛ぶと思いますよ!
あかりさんのお父さんはリュウジさんのファン!?

僕はね、なんであかりさんのことをリスペクトしているかというと、本当に料理が好きな方だと感じるから。

料理っていうか、ごはんが好きなんですよね。私って趣味なし人間で。本当に食べることしか趣味がないんです。

そうなんだ!あかりさんが目立った活躍をするようになったのって、ここ2年くらい?

料理研究家を始めて4年になります。

4年でこの活躍!?すごいね!基本、お仕事は雑誌ですか?

8割は雑誌です。あとはYouTubeとかPodcastとか。YouTubeはけっこうとがった料理も出していますね。

たしかに、前編で作った「薬味たっぷり出汁カレー」も、けっこうとがってますよね。万人受けというよりは、作る人を選ぶ感じ。実際に食べたら、誰が食べてもおいしいんですけど。


実は、私の父がめちゃくちゃリュウジさんのファンでして。やっぱりリュウジさんってカリスマだから。

そうなんだ!僕のレシピのほうが取っつきやすい男性は多いかもね。あかりさんってガッツリ系レシピのイメージがないですよね。

意外とガッツリしたのも好きなんですけどね。酒飲みなので。自分の料理を食べていて、「もうちょっと塩ほしいな」って思うこともあります(笑)。

あかりさんってお塩の使い方がすごく上手ですよね。

基本的に味付けはお塩ですね。海外在住で私のレシピを作ってくださる方もいるので、お塩なら手に入りやすいかなと思って。
過去の自分が出したレシピを越えられるか?

最近、注目している料理家さんっていますか?

私は雑誌で活動している料理家さんをよくウォッチしています。でも、そういう料理家さんってあまりSNSで発信していなかったりして。雑誌界隈とSNS界隈ってあまり交わらないんですよね…。

わかる。従来の料理研究家って雑誌やテレビがメインだったわけじゃないですか。だけど僕はSNSから出てきたから、交わらないというか、うっすら嫌われてる気すらします(笑)。

私は「20~30代の、日々の生活に追われていて料理するのしんどいけど料理を楽しみたい方」に向けてレシピを作っているんですけど、そういう方にぴったりな料理家さん、実は雑誌界隈にも多くいらっしゃると思うんです。雑誌の撮影ってあまり料理家同士でコラボレーションすることがないので、横のつながりがそんなになくて…。私が一方的にファンなだけなんですよね。

僕もそういう人と知り合いたいなぁ。オファーしたら来てくれるかな。


料理研究家って、毎日毎日ずーっと料理を作りつづける中で、いかにモチベーションを保つかが大事じゃないですか?

すごくわかります。

僕は料理研究家になって10年目くらいなんですけど、モチベーションについて考えた結果、「誰かに僕を倒してほしい」って思うようになりました。もう、僕のレシピがもてはやされる世界に飽きた。

主人公すぎる(笑)。

だからあかりさんが出てきたとき、すごく心が踊ったんですよ。「やっと僕を倒してくれるかもしれない人が現れた!」って。

私のレシピって、SNSの中ではInstagramが相性がいいと思うんですよね。だけど私は「リュウジさんがいるから」という理由であえてXを選んだんです。リュウジさんと違う世界観の人間が、どこまでXで受け入れられるのかを試したくて…。ある意味、リュウジさんに挑みたかったのかもしれません。


新しい人に挑まれたい反面、僕は過去の自分に挑みたくて。過去のレシピをなかなか越えられなくてもがいているんですよ。新しいハンバーグのレシピを出したとしても、結局は初期の「至高のハンバーグ」を越えられなかったりする。でも、料理家って過去の自分を越えなきゃいけないじゃないですか。

そうですかね。過去の自分を、越えなくてもいいんじゃないですか。

え?

長谷川あかりのハンバーグのレシピは「バター酒蒸しハンバーグ」の一つだけなんです。あれがベストだから、他のレシピがあったら私の言葉が嘘になっちゃう気がして…。だから「他のハンバーグレシピを作ってください」ってオファーがあっても断っています。

その言葉、刺さりますね…!

私は歌手のaikoさんが大好きなんですけど、きっとaikoさんも「『カブトムシ』みたいな曲を作ってください」ってオファーがたくさんあったと思うんです。けれど、『カブトムシ』はあの一曲だけなんですよね。料理家も同じで、一人の人間から出てくる料理って、そこまで多くはないと思っています。

僕とは正反対だ。僕は過去の自分を越えるために、どんどんレシピをリニューアルするから。たとえば、初期のハンバーグよりも今のハンバーグのほうが、圧倒的に簡単なんですよ。味だけじゃなくて、簡単さやコストパフォーマンスという観点でもブラッシュアップを試みています。

リュウジさんのレシピって、厚みがどんどん増していってますよね。

これからも厚みを出して、過去の自分を越えたい。そしていずれは、誰かに僕を倒してほしいです。
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