リュウジさんの「至高の豚汁」を双松桃子さんが作る

リュウジさんの豚汁、にんにくと生姜がきいていておいしいですよね。

もつ煮みたいな味付けだからね。豚汁って味噌汁をベースに作ることが多いけど、僕の豚汁はもつ煮がベース。だからすごく流行ったんだと思う。

たしかにもつ煮とか鍋っぽい。具だくさんで食べごたえがありますよね。

この豚汁さえ作っておけば、他のおかずはいらないくらい。この豚汁、いまだにYouTubeでたくさん再生されてるんだよ。

ロングセラーですね。

桃子にもこういうロングセラーレシピを作ってほしいんだよね。定番の家庭料理レシピで、自信のあるものを一つ持っておくといい。そういうのある？

今のところはないですね。本気の家庭料理よりも、簡単でバズりやすいレシピが多いです。

まあ、まだいいか。最初はバズるレシピを出し続けて、レシピ本が売れてきたら本気のレシピを出していけばいい。僕の「至高シリーズ」みたいな。

参考にします！

リュウジさんの教えはいつも参考になります。レシピ本の撮影も、料理を作った直後に食べられるからすごく勉強になりますね。リュウジさんの技を少しずつ盗んでいます。

弟子なんだから、師匠の技を盗むのはぜんぜんアリ。でも、僕と桃子の料理ってあまり似てないよね。使う調味料とかぜんぜん違うし。

たしかに、そんなに似てないかも。

まぁ、料理研究家は仕事すればするほど磨かれていくからね。まずは仕事をすることが第一だよ。

はい！

大根もにんじんも、皮はむかなくていいよ。どうせ煮ちゃうから、皮つきでもぜんぜん気にならない。僕は、やらなくてもいいことはやらないから。

たしかに、煮込めば皮つきでも食感変わらないですよね。

ねぎは斜め切りで。

ねぎは最後に入れるんですよね。

そう、食感を残したいからね。クタクタにしないのがポイントです。

こんにゃくはボウルで洗ったほうがいいですか？

流水でさっと洗うだけで大丈夫だよ。刺身で食べるわけじゃないから。

こんにゃく、リュウジさん以前は手でちぎってましたよね。

そうしてたんだけど、手でちぎると爪に黒い粒が入るから、今はスプーンでくり抜いてる。衛生的にもこっちのほうがいいし。包丁で切るより表面積が多くなるから、味が染みやすくなるんだよね。

ごぼうはささがきじゃなくて薄切りなんですね。

ささがきは面倒だから。

リュウジさん、ささがきのレシピってありましたっけ？

ないと思う。細くしたいときは、半分に切って斜め薄切りにすればささがきと大差ないしね。ごぼうサラダのときはそうしてる。

リュウジさんのレシピには「豚バラを半分ほどにちぎりながら加える」って書いてありますけど…。

ちぎってもいいし、切ってもいいよ。こだわりがあるわけじゃないから。僕は面倒だから手でちぎることが多いけど、 せっかくまな板と包丁が出てるし、切ってもいいんじゃない。

僕の汁物のレシピって、味噌汁というよりは鍋やラーメンスープに似てるんだよね。にんにくと生姜もかなりきかせるし。

そういう味が好きな男性は多いですよね。

なぜかテレビ局関係者ってみんなラーメンが好きなんだよ。だからテレビ業界に僕のファンが多い(笑)。

肉が鍋底にくっつくなぁ。

くっついても水入れるから大丈夫。具材、もうぜんぶ入れちゃっていいよ。

豚肉の脂が全体に回って野菜に照りが出てくるまで炒めて。

あ、いい感じに照りが出てきたね。そしたらもう水を入れていいよ。

ポイントとしては、味噌も含めてすべての調味料を入れて煮込むこと。「味噌を沸かすなんて信じられない！味噌は最後でしょ！」と言う人もいるけど、あえて先に味噌を入れてるの。それがうまいんだから。

調味料は入れるけど、にんにくと生姜はまだ入れないんですよね。

そう。にんにくと生姜は、煮込むと風味が消えちゃうからね。

ポコポコしてきましたね。

そしたらふたをして、中弱火にして20分待つ。

リュウジさんの豚汁はアクを取らないんですよね。

そう。食べればわかるんだけど、この豚汁は雑味がないとうまくないから。アクを取るとさっぱりしちゃって物足りないの。

桃子、にんにくすりおろすの遅いなぁ。

どうやったら早くなりますか？

鍋のふちでおろし金を固定すると早いよ。こんな感じ。まぁ、力の差もあるけど。

にんにくと生姜を入れたら一気に香りが変わりましたね！もつ煮のような匂いがします。

でしょ。これで2、3分煮込んで。

じゃあ、ねぎも入れちゃうか。ねぎは超重要。入れると入れないとでは味が90度ぐらい違う。

90度！

ねぎの青いところが入ると彩りがよくなる。にんじんのオレンジと合うんだよね。

フライパンで作った場合は煮つまり具合が変わってくるから、この時点で味見してください。味が足りなかったらちょっと味噌を足せばいいので。

なるほど！

これで、誰もが喜んでくれる豚汁の完成！

いい香り！おいしそう！

いただきます！

うーん、やっぱりこの豚汁大好き。染みます。にんにくと生姜がきいていてめっちゃおいしいです！

やっぱりいつ食べてもうまいな。

この豚汁、居酒屋で出してほしい。お酒の締めに食べたいです。

豚汁ってごま油を入れすぎたらごま油の味になっちゃうけど、このレシピはちょうどいいんですよね。

火を入れてるから、香りがいい感じに飛ぶんだよね。火を入れたごま油と入れないごま油はぜんぜん違うから。

リュウジさんから見て、双松さんの料理の特徴はどういうところですか？

桃子は感覚派。僕は、食材や調味料の合わせ方がデータ化されているんだよね。過去にこういうレシピがあったからコレとコレは合うだろうとか、作る前にロジックで考える。桃子はもっと思いつきで、「これ入れてみようっと」って感じで足していく。

たしかに思いつきかも…。

よく一緒に飲みに行くんですけど、桃子って卓上の調味料をめちゃくちゃ使うんですよ。食べものに異常なこだわりがあって、「おいしいものを食べたい！」って気持ちがすごく強い。僕はレシピを作って提供するのは好きだけど、桃子ほど食べることへの情熱はないですね。

食いしん坊なんですよね(笑)。

僕もそうだけど、桃子もこれから認知が広がるにつれて、人からいろいろ言われることが増えると思うよ。「料理をちゃんと習ってきてないんじゃないか」とかね。

リュウジさん、今まで一番言われた言葉はなんですか？

「料理研究家のくせに味の素を使うな」だね。不思議なもので、白だしや鶏ガラスープやコンソメを使ってもなにも言われないのに、味の素だけいろいろ言われるの。味の素って、グルタミン酸とイノシン酸がぜんぶ入ってる万能調味料なのにね。

料理研究家で味の素を使う人、リュウジさん以外ほとんどいないですしね。

桃子も使わないよね。

使わないですね。なんで使わないのか、自分でも説明できないんですけど…。

感覚派だから説明できないんだね。弟子なんだから、僕の「味の素使い」を受け継いでよ。

じゃあ使っていくんで、使い方教えてください！

基本的に、桃子の料理はおいしいんだよね。だから僕は、桃子の料理には口出ししない。SNSの使い方とか、マーケティング的なことはアドバイスするけど。

弟子になったらもっと料理を教えてもらえると思ってたから、ぜんぜん教えてもらえなくてビックリしました(笑)。

だって僕が料理を教えたら、それは僕の料理になっちゃうから。だったらリュウジでいいじゃん。僕は「リュウジのコピー」じゃなくて「料理研究家の双松桃子」を育てたかったわけだから。

結果的によかったと思います。

たまに「めちゃくちゃ僕の影響受けてるな」ってわかるアカウントがあるけど、二番煎じはトップにはなれないじゃない。だから、桃子には「僕のやり方を真似するのはいいけど、どこかに自分の個性を入れて」と言い続けてます。実際、桃子は僕がやっていないことを積極的にやってるし、オリジナリティがあるよ。

こんなにリュウジさんに褒めてもらえたのはじめて(笑)。

リュウジさんに弟子入りしてから、SNSでの発信がうまくなったと思います。「作ってみたくなるような文章の書き方」はリュウジさんから学びました。

「バズってるレシピ投稿をぜんぶ書き出して、どうしたらみんなに見てもらえるのかを研究して」とか言ったもんね。最初はぜんぜんだったけど、最近は桃子のレシピもバズるようになってきた。もちろん僕も拡散してるけど、やっぱり元の投稿がよくないとバズらないんですよ。だからバズるようになってきたのは桃子が成長した証拠。

3年やって、少しは成長できました。

実力はあるから、あとはしゃべりがもうちょっとうまくなれば仕事がバンバン来ると思うよ。

双松さんみたいに料理研究家になりたい人は、まず何からはじめればいいですか？

僕にDMすればいいんじゃないですか(笑)。

そんなこと言ったらリュウジさんにいっぱいDM来ちゃいますよ(笑)。

今のうそだから本気にしないでね！僕はもう弟子はとりません。桃子だけで手一杯です。

じゃあ、これから料理研究家になりたい人はどうしたらいいんでしょう？

発信を継続していくしかないと思います。継続しないと、咲くものも咲かない。種をまいて絶えず水を与えていかないと、花は咲かないからね。

がんばります…！

継続も大事だし、どうやったらバズるかを考えるある程度のクレバーさも必要。誰にも見られなければ芽は出ないからね。でも、まずは本当においしいものを作れること、それが第一。おいしいものを作れて、発信を継続できるようになったら、あとは見せ方を考えればいいと思います。

これからも、見せ方を学んでいきます！